2023年10月30日掲載
医師・歯科医師限定

内臓脂肪型肥満の発症・進展に白血球中のタンパクが関与―横浜市大の研究グループが解明、医学誌で発表

2023年10月30日掲載
医師・歯科医師限定

MedicalNoteExpert編集部

生活習慣病に悪影響を及ぼすとされる内臓脂肪型肥満の発症・進展に、免疫細胞の「ATRAP」が重要な役割を果たす新たなメカニズムを、横浜市立大学の研究グループが解明。成果が医学誌「Metabolism, Clinical and Experimental(2023年10月13日オンライン先行)」に掲載された。

ATRAP欠損マウス、インスリン抵抗性など改善

同大学大学院医学研究科病態制御内科学/医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の塚本俊一郎医師、鈴木徹医師、涌井広道准教授、田村功一主任教授らの研究グループと、同研究科免疫学の田村智彦主任教授、奥田博史助教らとの共同研究。

研究ではまず、野生型マウスに高脂肪食を与えたところ、肥満の初期段階で白血球中のアンジオテンシンII受容体(AT1受容体)結合タンパク(ATRAP)の発現が増加することを確認。次に、骨髄移植によって骨髄のATRAPを欠損させたマウス(BM-KO)と、骨髄野生型マウス(BM-WT)の2種類のキメラマウスを作成し、高脂肪食を与えて比較した。その結果、ATRAPを欠損させたBM-KOマウスは骨髄野生型BM-WTマウスと比較して肥満が有意に抑えられていたことに加え、内臓脂肪の減少、インスリン抵抗性の改善、脂肪組織の代謝環境の改善が見られたという。

詳細に調べたところ、BM-KOマウスの脂肪組織ではM2(CD206+)マクロファージの増加抑制と、関連するTGF-β経路が抑制されることが分かった。これにより脂肪細胞の小型化と代謝改善が起こり、最終的に内臓脂肪型肥満の軽減やインスリン抵抗性の改善につながったと考えられるとしている。

研究グループは「骨髄由来免疫細胞のATRAPが内臓脂肪型肥満の発症・進展に重要な役割を果たしていることを示している。免疫細胞におけるATRAP発現の調節は、代謝障害を伴う内臓脂肪型肥満に対する重要な要素である可能性がある」と結論づけた。また、骨髄・免疫細胞中のATRAPの発現が、内臓脂肪型肥満のバイオマーカーやサロゲートマーカーとして応用できる可能性が期待される。さらに、免疫細胞ATRAPの発現制御が、内臓脂肪型肥満の新たな治療標的になり、将来的には新たな肥満症治療の開発につながることも期待されるとしている。

肥満は糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、慢性腎臓病、悪性腫瘍などの疾患リスク増大と関連し、肥満者は非肥満者と比べて死亡リスクが2倍に増加するとされている。特に内臓脂肪型肥満は高血圧、糖尿病、虚血性心疾患などのリスクをさらに高めると報告されている。

同研究グループはこれまでに、心臓、腎臓、脂肪組織などにおけるATRAPの発現異常が、高血圧や糖尿病、肥満症の発症や進行と関連することを報告。別の研究では免疫細胞におけるATRAPの存在が、全身の炎症などに影響する可能性が報告されていた。しかし、肥満の病態におけるATRAPの具体的な機能は解明されていなかった。

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