2021年10月06日掲載

【症例紹介】微小大腸がんの1例:拡大内視鏡観察の重要性

2021年10月06日掲載

札幌医科大学医学部 消化器内科学講座

吉井新二先生

症例

現病歴

多発大腸がんに対し、結腸右半切徐術後のサーベイランスの内視鏡を行った60歳代男性。

その他臨床情報

大腸がん術後にLynch症候群(MSH2ナンセンス変異)の確定診断となった。

検査結果

血液検査所見では腫瘍マーカーを含め、特記すべき異常所見は認めなかった。

カンファレンスにて

大腸内視鏡検査所見

白色光での通常観察では、S状結腸に大きさ約5mmの弱発赤した平坦隆起性病変を認めた。一見すると腺腫にもみえる。

画像強調観察(Narrow Band Imaging:NBI)

中央部に不整な腺管構造が示唆された。

インジゴカルミン色素散布像では、中心部は鋸歯状を呈する小型腺管の密在が認められた。

クリスタルバイオレット染色による拡大内視鏡観察では、辺縁の腺管は明瞭な鋸歯状腺管を認め、伸II型であった。

以下は上図白枠部分の拡大。

中心部はVI型pit pattern と判断した。

以下は黄枠部分の拡大。

以上の所見から、深達度Tisの早期大腸がんが疑われ、大腸鋸歯状病変由来の可能性を考えた。

経過

早期大腸がんと判断したため、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した。

以下、点線で示す部分に割線を入れ、病理組織学的検索を行った。

HE染色では紡錘形に腫大した核を有する異型細胞の表面に鋸歯状構造を伴う管状増殖を認め、Superficially serrated adenoma(SuSA)からがん化した病変と考えられた。

最終病理診断はCancer in superficially serrated adenomaでtub1>tub2 ly0 v0、HM0、 VM0であった。ミスマッチ修復遺伝子産物はMSH2、MSH6で、病変部分において発現低下を認めた。


本症例のポイント

本症例は腫瘍径5mmと非常に小さな病変であることから、通常の内視鏡観察の段階では腺腫と判断してしまう可能性がある。近年、小さな病変に対する治療法としてcold polypectomyが普及しつつある。しかし、簡便性などのメリットがある一方で、通電しないことからburning effectが期待できず、病変の病理組織学的な断端評価が困難となることや、切除深度が浅くなりやすいなどのデメリットがある。そのため、がんが疑われる場合は通電によるEMRで切除するべきである。本症例も詳細な拡大内視鏡観察を実施しなければcold polypectomyで切除されてしまった可能性があり、拡大内視鏡観察を行うことの重要性を示している。また、近年Hashimotoらが「表層の鋸歯状変化を伴う管状腺腫」をSuperficially serrated adenoma(SuSA)と提唱した。その特徴としてS状結腸・直腸に発生するものが多く、KRAS変異を認める。Traditional serrated adenoma(TSA)と共通の遺伝子異常を有し、TSAの前駆病変の1つと考えられている。当科では、質の高い内視鏡所見に基づいた臨床診断、これら所見に対応した病理組織像、さらに遺伝子解析を加えたtranslational researchを確立している。これらのデータの蓄積により、大腸がんの発がんメカニズムにおける新知見を見出す可能性が期待できる。

参考・関連文献

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