2021年11月11日掲載
医師・歯科医師限定

非細菌・非ウイルス性炎症に新概念「クローナル・ヘマトポイエーシス」――経口薬で抑制の可能性に現実味

2021年11月11日掲載
医師・歯科医師限定

東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻器官病態内科学講座 循環器内科学教授

小室 一成先生

心不全だけに限られた話題ではないが、2017年にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で紹介された「クローナル・ヘマトポイエーシス(clonal hematopoiesis)」という概念が非常に興味深い。

炎症は通常、外部から細菌やウイルスが侵入して起こる。ところが、心臓や肝臓、腎臓などで細菌もウイルスも関与しない慢性的な炎症が起こり、疾患を発症させることがあり、その原因が分かっていなかった。その1つの答えがクローナル・ヘマトポイエーシスではないかというものだ。

血液中の赤血球、白血球、血小板などは骨髄の中の造血幹細胞から作られる。その作業は一生続くのだが、年を取るにつれて幹細胞の種類が減ってゆき、最終的にはごく少数のクローンから全ての血液細胞が作られるようになる。人によっては造血幹細胞の遺伝子に変異が生じてIL-6やIL-1βなどの炎症性サイトカインを出しやすいクローンが増える。その結果炎症を起こしやすいマクロファージやリンパ球が肝臓や腎臓、心臓に遊走し炎症を起こす。

昔から炎症が原因といわれていた動脈硬化だけでなく、心不全や肺高血圧症などさまざまな病気にもクローナル・ヘマトポイエーシスが関係しているのではないかということがだんだん分かってきた。

ではどう治療するか。実はこれより以前のNEJM誌に「CRPの高い人にIL-1βの抗体を投与すると、循環器疾患だけでなくがんまで発症が減った」という論文が出た。ただ、CRPが少々高い人にIL-1β抗体を打ち続けることはコスト的にも合わないし、感染症のリスクも高まる。コンセプトとしては面白いが、当時は臨床まで至らなかった。

ところが最近、抗体医薬ではなく経口薬でできるのではないかという話になり、慢性炎症を抑制することによる疾患発症の予防的治療がいよいよ現実味を帯びてきた。

これはさまざまな疾患に関与する可能性があり、非常に大きい概念の変革であると考えている。

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