2021年11月11日掲載
医師・歯科医師限定

心不全予防のチャンスは4回――正しい知識の周知と予防で死亡回避を

2021年11月11日掲載
医師・歯科医師限定

東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻器官病態内科学講座 循環器内科学教授

小室 一成先生

心不全は患者数が大きく増加しているにもかかわらず、国民に正しく理解されているとはいいがたい。多くの人が「心筋梗塞と同じようなもの」と思っていたり、「死ぬ時は心臓が止まるからみんな心不全だ」と考えていたりする。そこで日本循環器学会と日本心不全学会はわかりやすい心不全の定義を発表した。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

このように心不全とは命に係わる重大な病気だが私が強調したいのは心不全は予防ができるということだ。しかも、心不全はあらゆる循環器疾患の終末像なので予防のチャンスは4回もある。心不全による死亡を少しでも減らすためには、国民にこの病気を正しく知ってもらい、どのように予防したらよいかについて啓発していく必要がある。

人は生活習慣の乱れから心疾患を発症し最後に心不全となる。したがって、心不全予防の第1歩は「よい生活習慣を身につける」ということになる。バランスのよい食事、適度な運動、節酒、禁煙、過不足のない睡眠、適正体重の維持――などを通じて、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病にならないようにする。

ステップ2。仮に生活習慣病になっても、そこから生活習慣を改善し、それでもだめなら降圧剤や糖尿病の各種治療薬、スタチンといった薬で生活習慣病を治すことが心不全予防につながる。

ステップ3。それでも一部の人は心筋梗塞や弁膜症、心房細動になってしまう。しかしまだこれは心不全ではない。心筋梗塞の人はACE阻害薬やβブロッカー、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)をきちんと服用することで心不全への移行を抑えられる。

このように、心不全に至る前に予防につながる行動を起こすチャンスが3回ある。

さらに、とうとう息苦しくなって心不全になっても9割は治療で退院することができる。しかし心不全は再発しやすいので再発予防が重要である。そのためには治療で元気を取り戻した後もほどよい運動をし、心不全薬の飲み忘れに注意し、風邪などの感染症に気をつけ、暴飲暴食や塩分の取りすぎを避ける。それが心不全のステップ4の予防になる。

4回のチャンスがあることを国民一人ひとりが理解すれば、心不全による死をかなり防ぐことができる。

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