2023年09月12日掲載
医師・歯科医師限定

日本神経免疫学会学術集会の見どころ紹介――新薬登場で医師に求められるスキル、会長など4氏に聞く

2023年09月12日掲載
医師・歯科医師限定

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 教授

横田 隆徳先生

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 准教授

西田 陽一郎先生

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 臨床准教授/がん・感染症センター都立駒込病院 脳神経内科 医長

横手 裕明先生

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野

天野 永一朗先生

第35回日本神経免疫学会学術集会が9月13日〜15日の3日間、東京国際フォーラムで開催される(一部ライブ配信あり)。テーマは「先端技術による神経免疫疾患治療の新時代~病態から病因治療へ~」。本学術集会の会長を務める、横田 隆徳氏(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 教授)のほか、学術集会の運営に携わっている西田 陽一郎氏(同大学 准教授)、横手 裕明氏(同大学 臨床准教授/がん・感染症センター都立駒込病院 脳神経内科 医長)、天野 永一朗氏(同大学 大学院生)に、テーマに込めた思いや学術集会の見どころ、神経免疫領域のトピックスなどを聞いた。

「病態から病因治療へ」学会テーマに込めた思いは

横田氏:日本神経免疫学会が扱うのは、重症筋無力症(MG)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)など、自己免疫が主な病態機序となる神経・筋疾患だ。これらの神経免疫疾患には国の指定難病も多く含まれており、治療が難しい時代が長年続いてきた。しかしここ約10年で立て続けに新薬が登場し、治療が劇的に変わりつつある。その効果は患者によって異なるものの、薬が反応する患者には素晴らしい効果をもたらし、多くの方が症状をコントロールできる時代が到来している。

ただ、いずれも対症療法であり、病気を根本から治せるようになったわけではない。今後は病因に対する根本治療を実現していきたいというのが私自身の強い思いだ。そこで、本学術集会では「先端技術による神経免疫疾患治療の新時代~病態から病因治療へ~」というテーマを掲げた。

神経免疫治療の進歩――薬のメカニズムを理解して使いこなせる医師に

横田氏:今年の学術集会は、例年2日間だった開催期間を3日間にし、各種講演やシンポジウムを増やしている。神経免疫疾患に対する治療薬が増えているので、それらを使いこなすために学術集会の場でより多くの知識を吸収してほしいと考えたためだ。

私が神経内科医になって最初の頃は、神経免疫疾患に対する理論に基づいた治療法がほとんどなかった。数種類ある治療法からいくつか組み合わせて治療するのだが、効果が出るかどうかは正直やってみないと分からないという時代だった。しかし、近年登場した新薬は、標的に対してどのように作用するのかが非常に明確になっている。薬のメカニズムがこれだけはっきりしているのだから、臨床医としてはそれを深く理解したうえで、効果をより発揮できるような使用法の確立に貢献したいと思っている。たとえば、患者に応じた薬の使い分けや組み合わせ、使用順序、さらにはサイドエフェクト(副作用)の対応などについてどのようにするのがよいのか、臨床データを出していくことが大切だと考えている。

西田氏:私が医師になった20〜30年前、多発性硬化症や重症筋無力症では大量のステロイド薬を投与するのが主な治療法だった。もちろんステロイド薬が奏効する場合もある一方で、副作用が大きな問題点としてあった。今はターゲットにピンポイントで作用する素晴らしい薬剤が多数登場しているが、医師がそれを使いこなせなければ患者のためにはならない。私自身、そうしたスキルを磨いていきたいし、指導者の立場として若手にも薬をしっかりと使える医師になってほしいと思う。

横手氏:神経免疫疾患は、最初は診断すらつかない時代があった。それから診断はできても治療法がない時代、次に治療が登場したもののあまり効かない時代を経て、今に至る。ようやく効果のある治療薬が複数出てきて、それを医師がいかに駆使するかというフェーズだ。腫瘍内科医が複数の抗がん薬を組み合わせて治療をするように、脳神経内科医にもそうしたスキルが要求されることだろう。使い方を覚えるだけでなく、薬のメカニズムを深く理解することが今の時代の医師には求められている。私自身もそうした知識を今後より身につけて、若手にも指導していきたいと考えている。

天野氏:私はまだ医師になって10年ほどだが、この期間における神経免疫治療の変化は目を見張るものだったと思う。新薬の登場だけでなく、これまでは神経免疫疾患なのかよく分かっていなかった病気に実は免疫が密接に関与していることが分かってきたのも、この10年の大きな進歩だったのではないだろうか。たとえば、一見すると精神疾患だと思われていたものや、アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経変性疾患とされてきたものに、実は大きく免疫が関わっている可能性があることが分かってきている。神経免疫疾患の研究が進めば、神経変性疾患に対しても新しいアプローチがどんどん出てくるのではないかということを日々感じている。

学術集会の見どころ

横田氏:ぜひ聞いていただきたいのが、1日目に行われる「JSNI-PNIRS Asia-Pacific Joint Symposium」だ。神経免疫領域の基礎・臨床が世界的に今どのような状況にあるのか勉強できるよい機会となるだろう。ほかにも海外からのエキスパートを招待した特別講演も予定しているので、日本だけでなく世界に視野を広げて学びを深めてほしい。

また、大会長講演(特別講演3)では「神経免疫疾患に対するヘテロ核酸の開発」と題し、神経免疫疾患の根本治療に対する私自身の思いや取り組みについてお話しさせていただく予定である。

西田氏:教育講演は4つ準備している。うち2つは、多発性硬化症/視神経脊髄炎/重症筋無力症/末梢神経障害に関する2年間のアップデートについて著名な医師に講演いただく(前者2疾患は教育講演1、後者2疾患は教育講演4)。いずれも近年治療薬が著しく進歩している疾患であり、適切な診断・治療を行っていくうえで非常に有益な話が聞けることだろう。もう2つは基礎免疫学について著名な医師にお話しいただく。

さらに、日本神経免疫学会の中島 一郎理事長の提案で、神経免疫学の基礎・臨床研究についてMichael Levy氏から指南いただく「MEET THE PROF.」を準備した。今後神経免疫学の分野で海外留学を考えている医師にとっては、もしかしたらLevy氏の下で留学できるチャンスになるかもしれない。

今回、3日間の開催になったことで、例年よりも多くの講演やシンポジウムを用意できたことが本学術集会の特徴だろう。120分のシンポジウムも複数用意している。ぜひ、多くの方の参加を期待したい。

日本神経免疫学会が果たすべき役割は

横田氏:神経免疫疾患の治療は急速な進歩を遂げているが、日本における課題の1つとしては、ベーシックサイエンスの弱さが挙げられる。臨床に比べて、基礎的な研究に携わる医師の数は非常に少ない。臨床に一生懸命取り組むのはもちろん大切なことであるが、神経免疫疾患の治療にあたってはメカニズムを理解することが重要だ。基礎研究を発展させていくことが、日本神経免疫学会の重要な役割の1つであると考えている。

また、日本神経免疫学会の会員数は現在700人ほどで関与している大学も少数だ。しかし、患者は日本全国に存在している。小児を専門に診ている神経内科医や脳神経外科医などを含めて、もっと多くの神経内科医や脳神経外科医などを巻き込み、幅広く活発な活動ができる学会になっていくことを期待している。

西田氏:神経免疫疾患は診断・治療が難しいものが多いため、日本全国どの病院にかかっても同じレベルの診療が受けられるかというと必ずしもそうではない。せっかく治療が進歩してきているので、ある程度の規模の病院であればどこでも適切な診断・治療ができるよう、検査方法や治療方法について啓発することも日本神経免疫学会の責務だと考えている。

横手氏:日本神経免疫学会は、新薬を使いこなすための知識とスキルを身につけるための重要な場だ。昨年からは、学会主導で「神経免疫診療医育成セミナー」が始まっている。難易度の高い診療が求められている今、こうした機会を利用して積極的に学び続けていくことが求められているだろう。

ぜひ学術集会に足を運んで新しい学びを得て

天野氏:年に一度の学術集会は、さまざまな分野の医師が顔を合わせる貴重な機会だ。神経免疫疾患の臨床・研究に携わる医師だけでなく、神経変性疾患や脳血管障害、免疫生物学を専門にする医師などが一堂に会して知恵を出し合いディスカッションすることは、今後の病態解明にとって大きな意義があるだろう。現地参加できる医師はぜひ東京に来ていただき、face to faceで話し合いながら親睦を深め、患者によい治療を届けるきっかけづくりの場になればと思う。

横手氏:私は10年以上前から日本神経免疫学会学術集会に出席しているが、年々規模が大きくなってきているのを感じている。今回は3日間の開催になり、これまで史上もっとも充実した内容になっているといっても過言ではないだろう。私自身も今回の学術集会でさまざまな情報を吸収して、神経免疫疾患の発展につなげていけるよう尽力していきたい。

横田氏:先ほどもお話ししたが、今の治療薬はメカニズムがはっきりと分かっているので、基礎をしっかり学び理解したうえで臨床に取り組んでほしい。ただ、自身で勉強するのは容易ではないだろう。ぜひ学術集会に参加して効率的かつ集中的に学んでほしいと思う。

また、神経免疫疾患の治療薬は、アルツハイマー病や脳梗塞、脳炎などにも作用することはほぼ確実であるため、本学術集会で得た学びは神経免疫疾患の治療だけでなく、そのほかの疾患にも必ず役に立つことだろう。ぜひ多くの方の参加をお待ちしている。

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