2021年09月07日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】分子標的薬の開発は多様性、速度もアップ――臨床医も作用機序理解に分子生物学的知識の更新を(630字)

2021年09月07日掲載
医師・歯科医師限定

東北大学大学院医学系研究科・医学部 血液・免疫病学分野 教授

張替 秀郎先生

正常細胞のがん化には何らかの遺伝子異常が関与している。個々のがん化メカニズムに特異的に関与する分子を標的とした分子標的薬は、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみを傷害するため、血液がん治療を大きく前進させた。たとえば、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫などは、分子標的薬によって治療成績が大きく向上した。

血液領域は腫瘍細胞と正常細胞の採取が容易であることから、分子レベルでの発症機序の解明が精力的に進められてきた。その結果、腫瘍細胞においては、遺伝子変異に加え、転写レベル、翻訳レベルでの遺伝子発現調節の異常が存在することが明らかになってきた。

さらに創薬技術の進歩により、分子の構造解析を基に新規薬剤を開発することが可能となったことから、これらの分子生物学的な発症要因を基に多くの分子標的薬が開発されている。これらの分子標的薬が治療成績の向上に寄与していることは間違いない。

分子標的薬は特定の分子を標的とする薬剤であり、標的とする分子(群)の変異や発現を投与前に解析することにより有効性の予知や適応の決定が可能である。全ゲノム解析がin houseで行える時代が間近に迫っており、これらの新規解析手法は新たな分子標的薬の開発に資するとともに、その適応を限定するうえでも有力なツールになることが予想される。また、新規分子標的薬の開発は多様性とスピードを増していくものと考えられ、使用する側の臨床医も、その作用機序を理解するために分子生物学的な知識の更新が求められるものと思われる。

会員登録をすると、
記事全文が読めるページに遷移できます。

会員登録して全文を読む

医師について

新着記事