2023年03月13日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】4年に1度の日本医学会総会――「ビッグデータ」テーマに技術革新がもたらす医学・医療の未来を考える(2100字)

2023年03月13日掲載
医師・歯科医師限定

朝日生命成人病研究所 所長/国立国際医療研究センター 名誉理事長

春日 雅人先生

日本の医学系141学会が加盟する日本医学会は、4年に1度の学術集会を2023年4月21日~23日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催する(現地開催・Web配信のハイブリッド形式)。「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」をテーマに行われる本総会では、技術革新によって変わる未来の医学・医療を俯瞰的に学び、共に考えるセッションが多数用意されている。会頭を務める春日 雅人氏(朝日生命成人病研究所所長/国立国際医療研究センター名誉理事長)に、総会の見どころやテーマ、開催に向けた思いを聞いた。

医師・研究者はデータ活用力が必須に――総会テーマへの思い

日本の医療は今、少子超高齢社会や新型コロナウイルス感染症など大きな問題に直面している。こうした問題を解決するために、おそらくもっとも頼りになるのが「ビッグデータ」という言葉に体現される、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)などの技術革新だろう。そこで今回の総会テーマを「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」とした。

ビッグデータの活用は、基礎研究においても重要な意義がある。研究では動物モデルで証明できた事象がヒトでも証明できるかを確かめるが、ヒトではなかなか当てはまらないことが多くある。動物モデルは遺伝的・環境的要因がほぼ均一であるのに対し、ヒトはみな異なる遺伝的特性を持ち、生きている環境も大きく違うためだ。そうしたヒトの多様性を理解するためには、ヒトに関する大量のデータを収集・解析する必要があり、技術革新が発展した現在ではそれが実現可能だ。これからは、ビッグデータから研究結果を導き出していくデータ駆動型サイエンス(Data-driven Science)に変わっていくだろう。医師、特に研究医は大量のデータを解析・処理する能力、あるいはその能力に長けたプロフェッショナルと綿密な連携が必要になると考えている。

日本医学会のあゆみ――「社会への発信」の重要性

日本医学会総会は1902年に第1回が開かれ、以降4年ごとに開催されて今回が31回目になる。120年にわたる歴史の中で、日本医学会総会の意義は大きく変化してきた。

当初の日本医学会は加盟する各学会(分科会)の連合で、総会も独自に開くのではなく分科会の日程の一部を「総会」と銘打って、その時代の最先端の研究を紹介する場であった。診療科の違う医師たちが一堂に会してつながりを持ち、共通のテーマ・課題について討論する場で、今もその役割は変わらない。

一方で変わったのは、医師のための総会から、医療従事者、さらには一般市民を含めた社会に開かれた総会になったことだ。戦後しばらくして日本医学会総会が分科会とは別に単独開催されるようになり、さらに時代がたちチーム医療の必要性が叫ばれるようになると、あらゆる医療従事者を巻き込んだ総会に変化していった。今では、医学・医療の現状と課題を社会に広く発信することも私たちの重要な使命である。

市民公開セッションや博覧会など市民向けプログラムも充実

今、世の中にはたくさんの医療情報が溢れかえっていて、有益な情報とともに、事実とは異なる不確かな情報も多く流れている。医療情報の非対称性を是正するために、人々に信頼できる正しい情報を届けることは本総会の1つの意義である。加えて、一般市民にも医療への興味・関心を強く持っている方が多く、専門性の高い新しい医療トピックを知りたい方も増えてきている印象だ。そこで本総会では、市民向けセッションに加えて、学術プログラムの一部を市民に無料公開するプログラムも予定している。

また、4月15~23日の約1週間、丸の内・有楽町エリア全体を会場にした市民向けの博覧会も開催する(入場無料)。現在予定している内容は、次世代の病院を見て体験できる「次世代スマートホスピタル202X」、運動や食事をテーマにした「セルフケアスタジオ」、地域包括ケアやホームドクターについて考える「コミュニティクリニック」といったプログラムのほか、新型コロナやがんゲノムについて学べる展示企画、子ども向けの手術体験などだ。そのほか、丸の内仲通りを中心に健康に関するさまざまなイベントを開催する「街ぐるみ企画」も予定しているため、ぜひご家族で一緒に参加いただきたい。

未来の医学・医療の変化を学ぶ、4年に1度の機会

現代では医療の領域でも技術革新が進み、今後さらに早いスピードで医学・医療が変わっていくだろう。日々の業務でお忙しいとは思うが、日本の医学・医療がどのように変わるのかを学び、考える機会を作ることは非常に重要だと考えている。医療従事者でも特に医師は、自身の専門領域に関わる学会しか出席しないことが多いと思うが、4年に1度の機会であるため、ぜひこの機に専門外の知見も深めていただきたい。学部学生は無料で招待する。

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