2021年10月21日掲載

新しい薬剤誘発性type-1過敏症

2021年10月21日掲載

磐田市立総合病院 皮膚科 部長

橋爪 秀夫先生

type-1過敏症はIgE抗体を介した細胞の活性化によって生じるが、近年こうした古典的type-1過敏症だけではなく、新しい薬剤誘発性type-1過敏症の存在が明らかになってきている。磐田市立総合病院の橋爪 秀夫氏は、第120回日本皮膚科学会総会(2021年6月10日~13日)で行われた教育講演の中で、新しい薬剤誘発性type-1過敏症について紹介した。

古典的type-1過敏症について

2019年に米国で報告された縦断的EHR(EHR:Electronic Health Record)を用いた調査では、アレルギー科を受診した患者のうち約14%に過敏症があり、そのうち約8%がtype-1過敏症であることが分かっている。さらに原因となる薬剤をみてみるとペニシリンが多数を占めていることも報告されている。

type-1過敏症は、古典的にはマスト細胞や好塩基球上にあるIgEレセプターと結合したIgE抗体にアレルゲンが結合することにより、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、膨疹やアナフィラキシーショックといったアレルギー症状を引き起こすといわれてきた。

しかし、こうした古典的type-1過敏症だけではなく、「最近ではいくつかの新しいtype-1過敏症があることが明らかになってきている」と橋爪氏は述べ、4つの新しいtype-1過敏症について紹介した。

新しいIgE-依存型:α-Gal症候群

橋爪氏が最初に紹介したのが、新しいIgE-依存型のtype-1過敏症であるα-Gal症候群だ。これはα-Galという糖鎖に対するIgE抗体を介したアレルギー反応のことである。α-Galは通常類人猿以上の高等生物には存在せず、ヒトは対応するIgG抗体を有している。

それでは、どのようにしてα-Gal症候群が引き起こされるのだろうか。橋爪氏は、マダニ刺症によって肉アレルギーを発症した男性の事例を紹介し、「マダニの消化管に含まれているα-Galが体内に注入されたことでB細胞のクラススイッチが入りIgE抗体産生を起こす。その結果、α-Galを含む肉に対しアレルギー体質になる」と述べた。

なお、α-GalはB抗原に類似していることから、B抗原を持つB型、AB型の方はα-Gal症候群を発症しづらいという。また橋爪氏が行った研究では、マダニに咬まれた回数が多ければ多いほどα-Galに対するIgE抗体価が上昇することも分かっている。

さらに橋爪氏は、2008年のNEJMに掲載されたChung氏らの研究を紹介した。この研究では、セツキシマブに対してアレルギー反応を示した患者はα-Galに対するIgE抗体を持っていることが証明された。つまり、マダニ刺症によってα-Galに対するIgE抗体産生を獲得することで、肉アレルギーだけでなく薬剤アレルギーを引き起こすこともあるのだ。

新しいnon-IgE-依存型:PEG-induced anaphylaxis

橋爪氏は次に、新しいIgE非依存型のtype-1過敏症としてPEG(ポリエチレングリコール)に対するアナフィラキシーであるPEG-induced anaphylaxisを紹介した。

PEGへのアナフィラキシーを起こす事例として、大腸内視鏡検査の前処置に用いる腸管洗浄剤の使用が挙げられる。これは腸管洗浄剤に含まれるPEGへのアレルギー反応によるものである。また、最近ではCOVID-19ワクチンによってアナフィラキシーを起こすケースがあるが、一部はワクチンに使用されているPEGが原因と考えられている。

こうしたPEGによるアナフィラキシーにはIgE抗体だけでなく、実はIgG抗体も関与していると報告されている。橋爪氏は、「PEG-induced anaphylaxisは、古くて新しいアナフィラキシーといえるだろう」と持論を述べた。


Reber LL et al, J Allergy Clin Immunol. 2017 Aug;140(2):335-348.より引用

新しい免疫非依存型:MRGPRX2-mediated anaphylaxis

続いて橋爪氏が紹介したのが、新しい免疫非依存型のtype-1過敏症のMRGPRX2-mediated anaphylaxisである。

MRGPRX2によるアナフィラキシーは2015年のMcNeil氏らの研究によって発見された。本研究では、通常の脂肪細胞(wild type:WT)とMRGPRX2という受容体を変異させた脂肪細胞(mutant:MUT)に、それぞれ抗IgE抗体とcompound48/80を結合させた。

すると抗IgE抗体を結合した場合、WT、MUTどちらも90秒で活性化したのに対し、compound48/80を結合させたMUTの脂肪細胞では細胞の活性化がみられなかった。これにより、MRGPRX2に直接薬剤が結合することで細胞の活性がもたらされることが明らかとなった。

a:抗IgE抗体およびcompound48/80結合時のWT・MUTの経時的変化


McNeil BD et al, Nature. 2015 Mar 12;519(7542):237-41.より引用

また本研究では、MRGPRX2に結合する薬剤はTHIQモチーフという構造を持つことも報告されている。

このようにMRGPRX2を介して直接細胞を活性化させる薬剤には、以下のようなものがあることが分かっている。

・フルオロキノロン製剤

フェノチアジン

NMBAs

ホルモン・キニン受容体のアゴニスト・拮抗薬:セトロレリクス、イカチバント、リュープロレリンなど

漢方薬:シザンドリン、バイカリンなどのフラボノイドを含むもの

またMRGPRX2を介した細胞の活性化は、好塩基球や好酸球にもあることについても明らかになっているという。さらに、MRGPRX2はLL-37などの因子を直接活性化するという報告もあり、橋爪氏は「MRGPRX2の認知度はまだまだ高くはないが、実はアトピー性皮膚炎をはじめとするさまざまな炎症に関与している可能性がある」と強調した。

薬剤性type-1過敏症の新しいメカニズム

橋爪氏は最後に、薬剤性type-1過敏症の新しいメカニズムについて触れた。

従来からIgE抗体を介する薬剤性過敏症はハプテン抗原が原因だと考えられてきた。ハプテン抗原は薬剤と自己タンパクが共有結合したもので、これが直接異物と認識されて過敏症を起こすという考えである。

こうした従来からの考えに対し、Pichler氏が2021年のAllergyの総説で新しいメカニズムを提唱している。それは、薬剤性type-1過敏症はハプテン抗原ではなく、fake antigen(見かけの抗原)を認識することによる反応であるという説だ。

たとえば、臨床の場ではプリックテストが行われることがあるが、アレルギーがある場合15分ほどで皮膚が赤く腫れ上がるなどの反応を示す。しかし、ハプテン抗原が共有結合するのには通常0.3〜数時間ほどかかる。もしハプテン抗原を認識することで過敏症が起きているのであれば、15分ほどで皮膚に反応が出ることに疑問が生じる。

また、ハプテン抗原の共有結合には時間がかかるため、抗原はゆっくりと時間をかけて増加することになる。しかし、アナフィラキシーの患者に対して臨床でよく行われている脱感作療法からも分かるとおり、IgE抗体が多く抗原が少しずつ増加していく場合には、その抗原に対して耐性がつくため、通常は反応が起こらない。

こうした理由から、薬剤性type-1過敏症は従来から考えられてきたハプテン抗原が原因ではなく、「fake antigen」といういわゆる見かけの抗原が急激に体内で増加した場合に起こるのではないかとPichler氏は提唱している。橋爪氏は「本説については今後検証すべきことは残されているが、実際の臨床の観点から考えても非常に理にかなっている点が多々ある」と本題を締めくくった。

講演のまとめ

・新しいtype-1過敏症として以下が挙げられる

 ・IgE-依存型のtype-1過敏症であるα-Gal症候群

 ・IgE-非依存型のtype-1過敏症であるPEG-induced anaphylaxis(IgG抗体も関与)

 ・免疫に依存しないMRGPRX2を介したtype-1過敏症

・IgE依存性の薬剤誘発性type-1過敏症はハプテン抗原ではなく、fake antigenを認識することによる反応ではないかという新しいメカニズムが提唱されている

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