2021年12月08日掲載
医師・歯科医師限定

難治性・重症喘息治療は経口ステロイドから 「生物学的製剤」へ――効果の一方、医療経済的課題も

2021年12月08日掲載
医師・歯科医師限定

高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学教室 教授

横山 彰仁先生

これまでは難治性・重症喘息に対して主に経口ステロイド薬による治療が行われていたが、近年は「生物学的製剤」が登場し、治療上の位置付けが変わりつつある。

経口ステロイド薬は安価で有効性が高いことから多く用いられてきた。ただ、服用が長期間に及ぶと副作用(特発性大腿骨壊死症、骨粗鬆症に伴う骨折、緑内障など)は必発である。この点を考慮すれば、患者のQOL低下を回避するためにも経口ステロイド薬に代わる生物学的製剤の使用が望ましい。ところが生物学的製剤は種類を問わず薬価が非常に高額であり、医療経済的な観点での課題が残る。今後、医療経済学的な研究の進展あるいは生物学的製剤の薬価引き下げなどの可能性に期待したい。

成人の難治性・重症喘息に対する生物学的製剤にはいくつかの種類があり、オマリズマブ(抗IgE抗体)が最初に認可された。オマリズマブは現在、季節性アレルギー性鼻炎の治療にも用いられている(既存治療で効果不十分な重症または最重症患者に限る)。

オマリズマブに続いて登場したのが、メポリズマブ(抗IL-5抗体)とベンラリズマブ(抗IL-5受容体α鎖抗体)だ。これらは喘息の発症に関わる好酸球を抑制するもので、投与前の血中好酸球数が多いほど喘息増悪発現の抑制効果が大きい傾向がみられる。また、ベンラリズマブのほうが好酸球数を抑制する効果は高いとされている。

さらにその後、デュピルマブ(抗IL-4受容体α鎖抗体)が認可された。デュピルマブは喘息のほかにアトピー性皮膚炎や好酸球性副鼻腔炎の治療にも用いられる。そのため皮膚科、耳鼻咽喉科、内科、呼吸器科などの幅広い科で使われる生物学的製剤となった。

また最近では、テゼペルマブ(抗TSLP抗体)が注目を集めている。喘息の発症に関わるサイトカインの1つTSLPを阻害する効果がどれほどのものかは非常に興味深い。これまでの臨床研究の成績を見る限り、その効果は高いようだ。またテゼペルマブは好酸球増加を伴う2型炎症のみならず非2型炎症にも有用である点にも期待できる。

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