2021年08月23日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】遺伝性乳がんなどBRCA遺伝子変異にはPARP阻害剤が著効――卵巣がんなどへの臓器横断的治療も視野に(680字)

2021年08月23日掲載
医師・歯科医師限定

東京医科大学病院乳腺科主任教授/日本乳癌学会理事

石川 孝先生

乳がんと一口に言っても、全部をひとくくりにはできない。

ホルモン受容体陽性がんは全体の7割で、ホルモン剤の作用に関しても分子メカニズムが分かってきたので、ホルモン剤に分子標的薬を追加して治療効果を増強する治療法が可能になってきている。したがって、ホルモンに関連する細胞増殖を効率的に抑えることができれば、さらに治療成績は向上する。

トリプルネガティブというがんも、ホルモン受容体もHER2も出ないだけのそのほかの集団、すなわち寄せ集めの集団といえる。最近細分化されていて、BRCA遺伝子の機能異常のある症例が多く含まれていることが分かってきた。

BRCAの機能異常があるとDNA修復ができないので、その細胞だけを殺すという薬が開発されている。PARP阻害剤という種類の分子標的薬で、今使われているのがオラパリブだ。さらに現在新たなPARP阻害剤が開発されている。注目されているタラゾパリブは経口薬でほかの抗がん剤は使わずに、すなわち髪の毛が抜けるなどの副作用もなく4割の症例で術前に使用して全てのがん細胞が消失したと2021年6月に開かれたASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)年次総会で報告された。

血液検査でBRCA変異がある人には確実に効く。トリプルネガティブが乳がん患者全体の10%で、さらにその中の10%がBRCA遺伝子変異なので、100人に1人程度ということになる。ただ、BRCA機能異常は遺伝子変異がなくても起こり、そういう人にも効果があると考えられるため、対象はもっと広げられる可能性がある。

BRCA機能異常は、卵巣がんや前立腺がんや膵がんの原因にもなるため、遺伝子の異常に応じた臓器横断的な治療は今後増えてくると考えられる。

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