2022年09月28日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】病棟カルテの書き方――悩める医学生・初期研修医へのメッセージ(若手指導医の視点から)(4500字)

2022年09月28日掲載
医師・歯科医師限定

岡山大学病院 総合内科・総合診療科/岡山大学学術研究院 医歯薬学域 県北西部総合診療医学講座 助教

大塚 勇輝先生

医学生や初期研修医にとって「自分のカルテに自信が持てない」「カルテを素早く書けるようになりたい」「SOAPカルテのAに書く内容に困る」といった悩みはつきものである。また、彼らを指導する立場にある若手医師も「カルテの書き方を指導したいけれど、具体的にはどうしたら……」と同じように困っていることもあるのではないだろうか。

そこで今回は、カルテには何を書くか、何を意識して書いたらよいか知ることを目指し、岡山大学病院 総合内科・総合診療科の大塚 勇輝氏に医学生・初期研修医向けの病棟カルテの書き方について、ご自身がかつて困った経験と若手指導医としての立場を活かして解説いただいた。

カルテの存在意義と三大原則

カルテの存在意義としては大きく3つあるのではないかと考えている。まず、診療内容の備忘録や裁判での証拠となる「記録」としての役割である。そして、医療チームの意思を「共有」するためのツールでもあり、診療内容を改善して医師個人の成長を促し、教育をするために情報を「整理」するためにも用いられる。カルテは患者さんだけでなく、医師の身も助け守る。その存在意義を達成するために、カルテを記載するにあたっては次の三大原則が重要である。

・第1原則:正確性

嘘や間違ったことを書いては本末転倒なので、カルテは公文書であることも意識しつつ、正しく記録することが何よりも基本である。

・第2原則:明瞭性

カルテは自分自身だけが見るものではないため、記載内容が読み手に伝わるよう分かりやすく記録する必要がある。

・第3原則:即時性

医療チームの目の前の患者さんの診療に活用してもらうためにも、カルテはリアルタイムで記録することが大切である。

第1原則:正確性――SOAP形式とは

卒前教育でも習うもっとも一般的なカルテ記載法は、1960年代にかけて米国で開発された「SOAP形式」であろう(Weed LL. N Engl J Med. 1968; 278(11): 593-600.)。SOAP形式とは、患者さんの問題点を抽出し、「S(subjective):主観的情報」、「O(objective): 客観的情報」、「A(assessment): 評価」、「P(plan): 計画(治療)」の4項目に沿って記載していくものである。本稿ではSOAP形式を前提として解説する。

SとOの「正確性」をどのように担保するか

1999年に提唱された医学教育における考え方に、学習者はReporter(報告者)→Interpreter(解釈者)→Manager(管理者)→Educator(教育者)の順に能力を習得するとする「RIMEモデル」がある(Pangaro L, Acad Med. 1999; 74(11): 1203-1207.)。まずは「Reporter」、すなわち「確実に臨床所見を収集し伝えられること」を目指したい。これはカルテ記載ではSとOに該当する。

Sは「患者さんの訴えそのもの」、Oは「バイタル、診察所見、検査結果など」で、これらは両方とも揺るぎない事実である。これらの情報を正しく「収集」しカルテを通じて読み手に「伝える」ことこそが、学習者としての第1ステップである。そのためには、自ずとSを引き出す問診力とOを収集する診察力も磨く必要があることに気付くことができる。

提供:大塚氏/Pangaro L, Acad Med. 1999; 74(11): 1203-1207.

Sの記載で留意すること:信頼関係を築き、充実した記載を目指す

Sには、症状の有無や、患者さん自身の思いと解釈の内容について記載するとよい。前者についてはclosedな質問で、後者についてはopenな質問で尋ねるとうまく聴取できるだろう。

重要なことは、また聞きなど他者から間接的に入手した情報を鵜呑みにしないことである。自分自身が患者さんに対峙して問診を行い、その固有の内容をカルテに記載する必要がある。信頼関係を築くにつれて、患者さんは多くの情報を提供してくれる。1人の患者さんに対して上級医よりも長く関わる時間を持てる学生・研修医だからこそ、その特権を生かしてより多くの情報を引き出せるように心がけたい。それによって、Sは唯一上級医よりも充実した記載ができる項目でもある。

Oの記載で留意すること:自分自身で収集した所見のみを記載する

Oで重要なのは、自分自身で診察して収集した身体所見を記載することである。また、検査結果に関しては、評価は含めず客観的所見のみを、検査レポートのコピー&ペーストではなく自分の言葉で記載する必要がある。診察も画像の読影も、自分自身が行うことによってのみ上達が期待できる。もし上級医が行っていなかったとしても、それを理由に疎かにしてはならない。

AとPの「正確性」をどのように担保するか

そもそもSOAP形式において、Aは「SとOから見出した問題点の医学的な解釈」、Pは「次の診療計画」に該当し、AとPはいずれもSとOの伏線を回収するイメージであると学生時代の指導医に教わった。

医学生は先の「RIMEモデル」における「Reporter」を目指すが、その後、研修医は「Interpreter/Manager」を目標とする必要がある。これはカルテ記載のAとPに該当する。すなわち、SとOの情報をもとに、頭の中の知識を根拠として分析と解釈を行い、そこから得られる選択肢を思考過程とともに、AとPに文章として表現するということである。

提供:大塚氏/Pangaro L, Acad Med. 1999; 74(11): 1203-1207.

AとPの記載で注意すべきこと

AとPでは、SとOで記載した内容「のみ」に対する評価を行う。また同時に、SとOで記載した内容については「全て」伏線としてAとPで回収する。

学生時代に「SとO、AとPが1対1で対応するように意識したカルテ記載を目指しなさい」と指導を受けた。しかし、それを実践しようと試みると、真にAやPに記載できるほどの思考内容を意外と自分は持ち合わせていないことに気付くことができた。自身の知識不足を痛感することは学習のきっかけとなり、その結果洗練されたAとPを記載できるようになるはずである。

Aの記載で留意すること:自分自身の考えを自分自身の言葉で記載する

Aでも重要なのは、何よりも「自分自身の考え」を書くことである。先述のように医学的な知識がないと記載しにくい項目ではあるが、研修医なりの視点が患者を助けることもある。自分なりの評価を記載し、上級医のものと比較することで新たな気付きが生まれる。上級医の記載をコピー&ペーストしている限り成長は見込めない。必ずやそれらしいAが記載できるようになるため、粘り強く日々の診療で練習を重ねてほしい。

Pの記載で留意すること:決定された方針だけでなく自分が行うべきことも

Pには、医療チームとして決定された方針を記載する以外にも、自分自身が次に行うべきことあるいは行いたいことを記載してもよい。

はじめは計画(プラン)まで見通すことはなかなか難しいが、自分で決定できない若手のうちは「上級医に相談する」なども立派なプランの1つである。Pは記載者の臨床能力や経験値がもっとも反映される項目であり、上級医から評価される点となり得ることも心にとめていただきたい。

第2原則:明瞭性――伝わるカルテ

カルテが伝わるまでのプロセスは、カルテが目に入り、文章に目を通し、思考を把握するという3段階に分けられる。すなわち、「読みやすく」、「理解できる」内容が書かれており、読み手に「誤解を与えない」カルテである必要がある。明瞭なカルテとは、読みにくく理解できない、いわゆる自己満足カルテの対極に位置するものである。

読みやすさ

かつて紙カルテの時代に多かった「文字が達筆すぎて読めない」という問題は、電子カルテが主流の現代では多くないだろう。経過とともに記載が長くなることを避けるため、前回カルテをコピーして追記することは避け、日々内容の取捨選択を行う。また、文字の羅列では読みにくいため、カルテの幅に合わせて改行を入れる、適切に段落を作成する、適度に字体を工夫するなどといったことを心がけたい。

理解できる

そして、読み手にとって理解できる内容を記載する必要がある。カルテを見る誰もが理解できるレベルを目指すようにと言われることもあるが、専門用語などを避けると逆に理解しにくくなることもある。個人的には医学生が理解できる程度のレベルが適切ではないかと考えている。誰が読む可能性があるかを意識し、独自の略語や横文字、英語やドイツ語の使用には注意する必要がある。

誤解を与えない

また、読み手に誤解を与えないためには、「~か」や、クエスチョンマーク、体言止めなどの語尾は避け、「きちんと言い切ってアセスメント文章を終了することが重要である」と学生時代に教わり、それ以来意識している。文末を曖昧にしたくなるときは、頭の中に悩みが存在しているときではないかと思う。その悩みまで含めて漏れなく文章化することを心がければ、その疑問をより深めて定式化し、次の診療に役立たせることができるのでぜひ試してほしい。

第3原則:即時性――使ってもらう

電子カルテの最大の特徴、それは複数人が各所から同時に閲覧可能という点である。電子カルテは医療チームへのメッセージツールでもあり、診療は医師のカルテを軸にして進められることを踏まえると、患者さんの診療を進めるためにもカルテを書く必要がある。

しかし「朝書くはずが夕方になりがち」「自分が書こうとしたときにはすでに上級医のアセスメントが記載されている」「1日1回の記載ではまとめきれない」といった悩みを感じている方も多いのではないだろうか。

上級医よりも早く

あくまで一例にすぎないが私自身の解決方法として、なんとしてでも上級医よりも早い時間にカルテを記載するよう心がけている。そのためには、上級医よりも早くSとOに関する情報を入手する必要がある。それを実現するため、上級医よりも早く回診し、上級医よりも早く検査結果を確認するように、といったことを意識して行動している。その副次的な結果として、患者さんや上級医から信用し信頼を寄せてもらえる一因にもなっているのではないかと考える。

朝一番に

必然的にほとんどの場合は朝いちばんにカルテを書くことになるが、私は特に患者数が多いときや忙しいときほど始業前にカルテを書き終える努力をしている。医療チームとしてその日その患者さんに行うべきことが整理できるというメリットがあるだけでなく、日中の勤務時間中と異なり各所からの呼び出しに作業を中断されることも少ないため、自分のペースで仕事を行うことができる。

リアルタイムで更新していく

日中に判明した検査結果などは、ほかの業務の隙間時間に都度(さもSNSに投稿するような感覚でリアルタイムに)、複数回にわたって記載していく。何度もカルテを書くことは一見面倒なようにも感じるが、慣れると1日分の出来事をまとめて書くよりも容易であり、急に起こったイベントへの対応も速やかに行うことができると感じている。働き方改革の波に逆行しているかもしれないが、研修医によくある「カルテ残業」を回避することができ、特に朝型の先生にとってはこの方法も選択肢となり得るのではないかと思う。いずれも「言うは易く行うは難し」であるが、これからもよりよい方法を模索していきたい。

まとめ

カルテの記載の原則を意識することで、以下のようなメリットがある

  • プロブレムのアセスメントに漏れが減り、患者マネジメントが上達する
  • 自分自身の知識不足に気付き、その臨床疑問への自己学習のきっかけとなる
  • 患者さんやほかの医療者からの評価が向上し、信頼される

謝辞

これまで私を指導してくださった指導医の皆さまと、本稿執筆にあたり協力をいただいた研修医の皆さまに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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