2023年04月13日掲載
医師・歯科医師限定

糖尿病診療は双方向のコミュニケーションが重要――医師だけでなくスタッフも参加、患者がアクセスできる窓口を多様化

2023年04月13日掲載
医師・歯科医師限定

北里大学病院 内分泌代謝内科 科長/主任教授

宮塚 健先生

糖尿病診療において“指導”や “患者教育”という言葉がよいのかという問題は、糖尿病のスティグマや病名変更議論に通じるものがある。指導や教育というと、医師から患者への一方通行になりがちだ。医療者と患者がそれぞれの考えを伝える“双方向”のコミュニケーションが望ましい。

北里大学病院では看護師や薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師といった診療に携わるスタッフ一人ひとりが患者の声を聞きながら、症例ごとの課題に対処する体制が整っている。このことが双方向のコミュニケーションを進める上でうまく機能していることを感じる。

たとえば、かつては良好な血糖管理ができていた患者が高齢になり、治療がうまくいかなくなったケースであれば、どこに問題があるか、患者の背景や家族の問題を含めて検討する。1型糖尿病のある高齢の方が、患者自身の手で頻回にインスリン注射を行うことが難しくなるような症例も少なくない。同居の家族のサポートが得られるか、どのような訪問診療が可能か、その患者に合った治療方針をスタッフ全員で考える。当院では持続グルコースモニタリングのデータを詳しく読み解くことができる看護師や臨床検査技師が在籍しており、個々の症例の問題点、解決策をそれぞれの立場から意見できるほど習熟しているのが強みだ。

さまざまな職種のスタッフが個々の症例に参加するということは、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を進める上でも強みになる。SDMでは患者の背景や意思などを聞き、話し合いながら互いが納得できる治療方針を考える。その際、医師が相手ではなかなか話しにくい問題でも、相手が看護師や管理栄養士であれば相談しやすい場合がある。患者さんと医療スタッフとの接点を増やしながら治療方針を決定する体制が整っていることも当院の強みの一つだ。

医師に多くのことが集中するようだと医師の疲弊を招き、働き方改革の流れにも逆行することになる。医師を頂点とする医療チームだと、スタッフは意見を言いにくいだろう。その点、北里大学病院は医師と他の医療スタッフがフラットな関係にあり、さまざまな提案や意見を言ってくれる。もともと北里大学に根差した風土ではないかと考えており、この伝統を大事にしたい。

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