2021年09月30日掲載
医師・歯科医師限定

多面的な作用をもたらすSGLT2阻害薬活用の可能性とは

2021年09月30日掲載
医師・歯科医師限定

虎の門病院 院長

門脇 孝先生

糖尿病の治療薬として大きな話題になっているのが「SGLT2阻害薬」だ。SGLT2阻害薬の作用には、腎臓の仕組みが大きな関わりを持つ。腎臓はブドウ糖を絶えず濾過し、近位尿細管で再吸収している。そのトランスポーターになるのがSGLT2である。腎臓におけるブドウ糖の再吸収は、人類が飢餓に耐えるための仕組みだ。エネルギー源であるブドウ糖を尿に排出してしまうと効率が悪いので、近位尿細管で全て再吸収する仕組みが備わっているというわけだ。

しかし糖尿病治療の観点では、尿に多量に出たブドウ糖を体に再吸収してしまうのは都合が悪い。そこで、SGLT2を阻害することで尿内にできるだけブドウ糖を排出し、血糖値を下げるはたらきを持つSGLT2阻害薬が考案された。


SGLT2阻害薬は、主たる作用のほかにも多面的な作用が期待されており、研究によってその全貌が明らかになった。たとえば、SGLT2阻害薬を使うと尿内にブドウ糖を排出するために体内のブドウ糖が不足し、エネルギーを補う必要が生じる。すると、全身のエネルギー代謝として、ブドウ糖の代わりに、脂肪を分解してできる脂肪酸を使う状態に切り替わる。脂肪酸が燃やされてエネルギーになるため、肥満の改善につながるのだ。

また、エネルギー代謝で脂肪酸を使うことから、脂肪肝の改善、血中の中性脂肪の低下につながる可能性がある。さらに、ブドウ糖と共にナトリウムも尿内に排出されるため血圧を下げる作用があることが分かった。

このように、SGLT2阻害薬は肥満を改善するための作用が多面的に備わっている。肥満のある患者は糖尿病のみならず高血圧、脂肪肝、中性脂肪などを合併していることが多く、それらを一網打尽に改善できる可能性があるという点で、非常に画期的である。


さらに近年の研究により、SGLT2阻害薬の2つの新たな作用が明らかになってきた。1つは腎機能の低下を抑制する作用。日本では毎年1万6000人ほどが、糖尿病が原因で透析導入を余儀なくされている。透析になる最大の原因は糖尿病である。透析患者1人あたり年間に約550万円の医療費がかかるといわれ、透析の医療費はついに1兆円を超えた。今後の高齢化の進行に伴い国家財政の圧迫が懸念され、透析患者をいかに減らすかが国家的な課題になっている。

その戦略として、当然ながら糖尿病の早期発見と治療は重要である。一方、SGLT2阻害薬には血糖値を下げる作用とは別に腎機能低下を抑制する作用があると分かったため、糖尿病性腎症が合併している場合の対応として注目が集まっている。実際、糖尿病患者で腎機能障害をきたした者やそのリスクがある者に対して、一部のSGLT2阻害薬の適応が新たに追加された。ただし、eGFR30ml/分/1.73m2以上の場合に限られる。なぜなら、腎機能が低下している場合には尿にブドウ糖を排出するはたらきも低下するため、eGFR30ml/分/1.73m2未満になるとSGLT2阻害薬の作用も著しく低下するからだ。

このようなSGLT2阻害薬活用の可能性は、糖尿病治療薬の分野で大きな話題になっている。使用頻度についても現在DPP-4阻害薬、ビグアナイド薬に次いで3番目に多く、今後さらに使用される機会が増えるだろう。また将来的な可能性として、糖尿病の治療薬として登場したSGLT2阻害薬が、腎臓病そのものの治療にも使われるようになる可能性にも言及しておきたい。

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