2021年10月14日掲載

【症例紹介】Epstein-Barr virus(EBV)とチオプリン製剤投与――EBV感染状況の確認

2021年10月14日掲載

札幌医科大学医学部 消化器内科学講座

横山 佳浩先生

当院では関連病院と連携し、インターネットを介した遠隔診療を行っており、今回紹介する症例はその遠隔診療で話題となった例である。

症例

患者

10歳代、男性

現病歴

X年1月からの腹痛、血便でA病院(関連病院)を受診した。全大腸内視鏡検査で全大腸にびらん、粗造な粘膜を認め、潰瘍性大腸炎(全結腸炎型)と診断された。1月末より寛解導入療法としてプレドニゾロン(PSL)70mg/日、リアルダ錠4,800mg/日を開始し、2月初旬には顆粒球吸着療法を週2回、計10回施行した。その後は臨床的寛解に至り、現在はPSLを減量中で症状の再燃は認めていない。

今後の治療方針について、再燃した際の対応を含め当院の遠隔診療を受診された。

検査結果

血液検査:白血球 9,740/µL、Hb 14.4g/dL、血小板 33.3×104/µL、Alb 5.0 g/dL、CRP 0.01mg/dL

NUDT15遺伝子多型 Arg/Cys

遠隔診療の内容

  • 主治医……関連病院医師
  • 専門医……当院医師


主治医急激に発症した潰瘍性大腸炎の患者さんです。寛解導入療法が奏功し、現在はPSLを10mg/日まで減量しています。

専門医今は何か症状はありますか?

患者:お腹の痛みもないですし、血便もありません。体調はよいです。

専門医:ステロイド治療は奏功していると考えます。今後は慎重にPSLを減量して経過を見ていきましょう。1~2週間ごとに2.5mg/日ずつ減量、症状に応じてもう少し慎重に減量してもよいかもしれません。最終的にはステロイドフリーが目標です。

患者:分かりました。

主治医:今後ステロイド減量中に再燃した際にはどのような治療法が選択肢となるでしょうか。チオプリン製剤の投与を考慮すべきですか。

専門医:選択肢の1つになると考えますが、Epstein-Barr virus(EBV)の感染状況はいかがでしょうか。EBVに関わる抗VCA-IgM抗体、抗VAC-IgG抗体、抗EBNA抗体などは測定されていますか。

主治医:チオプリン製剤投与を見越して、NUDT15は測定していたのですが、EBVについては調べていませんでした。早速調べてみたいと思います。

専門医:もしEBV未感染例であればチオプリン製剤投与は慎重になる必要があり、チオプリン製剤以外の選択肢として生物学的製剤なども考慮されます。特に小児の患者さんですので、ぜひEBVの感染状況を調べてください。

本症例のポイント

炎症性腸疾患患者に対するチオプリン製剤投与がリンパ増殖性疾患のリスクを高めることが海外から報告されている。さらにEBV感染がリンパ増殖性疾患と関連している(EBウイルス関連リンパ増殖性疾患)ことから、EBV未感染例におけるチオプリン製剤投与は注意が必要である。海外のデータでは小児において多くの症例でEBVの感染状況を調べないままチオプリン製剤が投与されている事実も明らかとなっているが、European Crohn's and Colitis Organisation(ECCO)のガイドラインではチオプリン製剤投与前にEBVの感染状況を確認することが推奨されている。また、成人例においても少なからずEBV未感染例が存在することから、小児のみならず成人のIBD症例においても、チオプリン製剤投与前にEBVの感染状況を確認することは有用と考えられる。

参考・関連文献

Lancet. 2009; 374: 1617–1625.

J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016; 62: 711-714.

J Crohn Colitis. 2014; 8: 443-468

Aliment Pharmacol Ther. 2018; 48: 723-730.

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