2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】関節リウマチ治療薬は生物学的製剤からJAK阻害薬へ――選択肢増、経口摂取がアドバンテージに(1000字)

2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授

渥美 達也先生

リウマチ膠原病領域の最新トピックスといえば、分子標的薬の台頭だろう。1998年に米国で初めてTNFαをターゲットとした生物学的製剤による治療が行われ、これが関節リウマチ(RA)治療の分岐点となった。日本では、ドラッグラグの影響で2003年に生物学的製剤による治療が開始されたが、その後もさまざまなサイトカインをターゲットとする薬剤が誕生したことで円熟した状態となっている。

一方、8年ほど前に誕生した新しい分子標的薬、JAK阻害薬は非常に画期的であり、現在大きな話題となっている。JAK阻害薬は炎症性サイトカインによる刺激が細胞内に伝達されるときに必要なJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害する内服薬である。おそらく一世を風靡した生物学的製剤は今後処方が減り、JAK阻害薬が関節リウマチの治療の主流になっていくだろうと感じている。

1剤目に登場したJAK阻害薬トファシチニブは当初、悪性腫瘍のリスクの懸念が強くあまり浸透しなかったが、4年ほど前に2剤目として発売されたバリシチニブが比較的急速にポピュラリティーを獲得した。内服薬で使いやすく、効果も抜群によい。バリシチニブの影響で、同系統である1剤目も評価が見直されることとなり、その後新たに3種類のJAK阻害薬が発売されている。

現在は5剤から選ぶことのできるJAK阻害薬だが、効果や安全性に大きな差はない。安全性の懸念としては、帯状疱疹が高頻度に発生するリスクがあげられるものの、当初の不安材料であった悪性腫瘍リスク上昇は投与前スクリーニングが浸透した結果、受容可能な範囲内に収まっている。

これに伴って2019年にヨーロッパリウマチ学会のリコメンデーションが改訂となった。通常の抗リウマチ薬メトトレキサートで効果不十分だった場合の次の手段として、今まで記載されていた生物学的製剤と並列する形でJAK阻害薬の名が新たに追加されたのである。

関節リウマチの治療薬は生物学的製剤だけでも非常に種類が多く、もっとも歴史の長いTNF阻害薬で5剤、さらにIL-6阻害薬やT細胞選択的共刺激調節剤もある。それぞれに特徴があり、各リウマチ専門医が各々の経験によって判断しているのが現状だ。

関節リウマチ治療薬は原因となる因子が解明されてきたことで、より特異的に、より低分子化されていく傾向だ。また患者の高齢化が急速に進んでいるため、薬剤の使い分けによる高齢者への安全な治療の確保と、確実な寛解の両立が急がれる。

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