2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】生物学的製剤ベリムマブ、ループス腎炎の寛解導入療法に効果――有用性評価の可能性も(700字)

2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授

渥美 達也先生

生物学的製剤ベリムマブは当初、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬として承認を受けたものの、関節リウマチに対する生物学的製剤の有効性と比較して「切れ味」に課題があり浸透していなかった。しかし昨年、SLEによって引き起こされる腎障害ループス腎炎に対するグローバルでの臨床試験結果がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載され、評価が見直されつつある。

活動性ループス腎炎の成人において、標準治療(ミコフェノール酸モフェチル、またはシクロホスファミド+アザチオプリン)に加えてベリムマブを静脈内投与した際の効果をみた試験だ。結果として104週の時点で、主要評価項目である腎反応が得られた患者は、ベリムマブ群43%、プラセボ群32%で、オッズ比1.6と大きな差が出ている。

一般的にループス腎炎の治療は、寛解導入療法を最大6か月間行った後、寛解維持療法に移行する。ベリムマブは、ステロイドの減量を目的に寛解維持療法として使用される程度の立ち位置だった。しかし今回は、追跡期間が104週と長期であり、寛解導入療法と寛解維持療法の両方にもたらす影響を評価している。

ベリムマブは日本でも発売されているものの、添付文書上に「重症のループス腎炎又は重症の中枢神経ループスを有する全身性エリテマトーデス患者に対する有効性及び安全性は検討されていない」と記載されていることもあり、いまだ寛解導入療法としての位置づけが低い。今回発表された試験結果によって重症腎機能低下患者への効果が証明されたため、今後寛解導入療法としての有用性が評価されてくる可能性がある。全身性エリテマトーデスにおける分子標的療法の考え方も変わるかもしれない。

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