2021年07月20日掲載
医師・歯科医師限定

【第120回皮膚科学会レポート】免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害 Update(3400文字)

2021年07月20日掲載
医師・歯科医師限定

横浜市立大学大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学 教授

山口 由衣先生

PD-1やPD-L1、CTLA-4などで知られる免疫チェックポイント分子は、免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群を指す。これら分子群を標的として、免疫抑制を解除する免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)を用いる際に注意すべきが免疫関連有害事象(以下、irAE)だ。

横浜市立大学 大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学教授の山口由衣氏は、第120回日本皮膚科学会総会(2021年6月10~13日)で行われた教育講演の中で、ICIによる皮膚障害の頻度や重症度、特に皮膚科医が注意したい皮膚症状等について解説した。

ICIと皮膚におけるirAEの頻度と重症度

ICIを使用することで抑制系の免疫反応が解除され、悪性腫瘍に対する有益な免疫反応が引き起こされることになる。一方、この過剰な免疫反応により、irAEとして肺、皮膚、心臓、大腸など全身のさまざまな臓器に症状が現れることがあり、特に皮膚症状として多彩な皮疹や白斑は皮膚科医も日々の診療で多く経験すると山口氏は言う。

特に、抗CTLA-4抗体ではかゆみも含むグレード1~2の皮疹は30~50%と非常に高頻度に発現し、抗PD-1抗体では同グレードの皮疹が20~30%で現れるとの報告が2016年になされている。一方、同報告によるとグレード3以上の皮疹は単剤の場合、3%程度にしか見られない。

山口氏は「irAEで生じる多くの皮疹はICIの継続に関して大きな影響を与えることはなく、皮膚科医の立場ではICIが継続できるよう対症療法を行うこと、さらに、ときに起こる重症度の高い皮膚症状の特徴をつかみ、注意を払うことが重要」との考えを述べた。

irAEの発現時期と重症度、薬剤ごとの頻度

抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体によるirAEの発現部位とその重症度、そして発現時期に関する報告も紹介された。

抗PD-1/PD-L1抗体の使用時には肺炎が起こることがある一方で、抗CTLA-4抗体では肺炎はほとんど見られない。その反面、大腸炎に関して着目すると、抗CTLA-4抗体のほうがより早期に重症度高く生じることが多いとされる。同報告では皮膚障害(皮疹やかゆみ)については薬剤ごとの差がないという結果になっていた。

さらに山口氏は、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体併用療法の場合には、単剤使用時よりもより早期に重症度の高い皮疹や臓器障害が生じる可能性があると注意を促した。

<薬剤別 irAE出現時期と重症度>

Nat Rev Clin Oncol. 2019 Sep;16(9):563-580より引用

山口氏は悪性腫瘍の種類によって、生じるirAEにも違いがあると続けた。関節痛や甲状腺機能低下症は、非小細胞肺がんよりも悪性黒色腫で発生しやすいという。また、肺炎は悪性黒色腫と比較して腎細胞がんに起こりやすい一方で、皮疹は悪性黒色腫で起こりやすい。

<悪性黒色腫と非小細胞肺がんに起こるirAEの比較>


Ann Oncol. 2017;28(10):2377-2385より引用


<悪性黒色腫と腎細胞がんに起こるirAEの比較>

Ann Oncol. 2017;28(10):2377-2385より引用

ICIによる皮膚障害の特徴

ICIによる皮膚障害として高頻度のものは、皮膚そう痒症、湿疹、白斑、紅斑丘疹、苔癬型皮疹と多岐にわたるが、重症度は高くないことが多い。加えて、多型紅斑やSJS/TEN、DIHS、AGEPなど重症度の高い皮膚障害のほか、乾癬や掌蹠膿疱症、さらには、自己免疫性水疱症やエリテマトーデス、皮膚筋炎といった自己免疫疾患などの皮疹が生じたとの報告も増えており、山口氏は「皮膚科医は重症度が高く治療を急ぐ病型や、免疫疾患関連の皮疹に特に注意すべきである」と伝えた。

irAEの出現と予後の関連性

抗PD-1抗体の使用で白斑が生じることは前述のとおりだが、実は白斑を伴った例で生存期間が延長しているという報告が多々あるという。白斑は特に悪性黒色腫の患者に抗PD-1抗体を使用した場合に生じやすく、これは、抗腫瘍活性を持つリンパ球が皮膚のメラノサイトを攻撃しているからだと考えられている。また、irAEを3種類以上伴った場合に予後がさらによくなったという報告や、全身性のirAEに対してステロイドを使用しても、それによる予後の悪化はないという報告も紹介された。

また、発症したirAEごとの予後の変化という観点での研究もなされており、2021年に報告された抗PD-1抗体単剤投与を実施している悪性黒色腫患者を対象とした後ろ向き研究によると、内分泌系(グレード1の甲状腺炎)を発症した患者の生存率がもっとも奏功していたという。

皮膚症状も発症群と非発症群を比較すると発症群のほうが予後がよい傾向にあるという結果で、皮膚症状発症群のうち白斑を伴った患者は1名しかおらず、白斑以外の皮膚症状でも予後がよい傾向であることが分かった。さらに、抗PD-1抗体による苔癬化病変や湿疹病変の出現は皮疹のない患者よりもPFSが優位に長いという報告もある。

併用薬とirAEの関連性

ICIと併用する薬剤にも注意が必要だ。ある報告では、抗PD-1抗体使用例では約17%に苔癬型の皮疹が見られ、そのうち、80%程度の患者は苔癬型の反応を引き起こす可能性のある薬剤を同時に内服していたという。つまり、ICI投与によってリンパ球が活性化しやすい環境は、ICIそのものによる皮疹ではなく併用している薬剤に対する薬疹を引き起こしている可能性が高いということだ。

そのほか山口氏は、抗PD-1抗体を使用してから1か月後にTENを生じた自験例を紹介した。投与から1か月後にもかかわらずirAEによるTENと判断した理由として、TENと同時に1型糖尿病や橋本病、HIT症候群などの自己免疫疾患を併発したと述べた。さらに当該患者は、アセトアミノフェンの薬疹に関連があるとされるHLA-A*02:06が陽性で、再発症時にはアセトアミノフェンが投与されており、アセトアミノフェンの薬剤誘発性リンパ球試験(DLST)が陽性であったという。

こうした症例から、ICI中止後にもその免疫学的影響が残存し、irAEの起こりやすい背景とともに併用薬に対する重症のirAEが引き起こされた可能性が考えられる。

irAEの発症・重症化予測

irAEの発症メカニズムは現在もさまざまな検討がなされており、発症や重症化に関わるバイオマーカーの発見が待たれている。

現時点では、既存の自己免疫疾患がある患者ではirAEが起こりやすいことが分かっているほか、皮膚のかゆみに関してはHLA-DRB1*11:01、大腸炎に関してはHLA-DRB1*03:01を持つ方に生じやすい可能性があるという。

2019年に発表された大規模研究では、11個のサイトカインがirAEの発症に関して予測的な有用性があることが示されている。これに関してTEN発症の1か月前時点でIL-6やGM-CSFが上昇していたという自験例が紹介された。

irAEの発症に関する予測的有用性のあるサイトカイン

  • G-CSF
  • GM-CSF
  • Fractalkine
  • FGF-2
  • IFNα2
  • IL-12p70
  • IL-1a
  • IL-1B
  • IL-1RA
  • IL-2
  • IL-13

山口氏は、重症のirAEの発症予測因子の発見は重要な検討課題であり、大規模な前向き研究の必要性があると強調した。

講演のまとめ

山口氏はポイントを以下のようにまとめ、講演を締めくくった。

  • ICIにおける皮膚障害の多くは軽症である一方、重症化するケースも見られるため、薬剤や患者背景に注意し観察をする必要性がある
  • 皮膚障害の頻度や重症度は、ICIコンビネーション治療やほかの分子標的薬の併用により上昇し得る
  • ICI投与中はもちろん、投与後であっても併用薬によるirAEには注意する
  • 潜在性の免疫疾患に注意する
  • irAEの発症や重症化を予期するマーカーの開発が待たれている

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