2021年09月30日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】GLP-1受容体作動薬の進歩――週1回の自己注射薬と使い分けの考え方(780字)

2021年09月30日掲載
医師・歯科医師限定

虎の門病院 院長

門脇 孝先生

インスリンの分泌を促す薬、インスリン抵抗性を改善する薬、インスリン注射という3種類の糖尿病治療薬の中でも、特にインスリン注射の分野で今話題になっているのが「GLP-1受容体作動薬」だ。GLP-1とは、L細胞から出るグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)というホルモンを指す。小腸のK細胞から分泌されるグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)と合わせて、「インクレチン」と呼ばれる。インクレチンは食後のインスリン分泌に関わる重要なホルモンである。

GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体に作用し、体内の血糖値が高くなったときにインスリン分泌を促進する。GLP-1は膵臓のβ細胞でインスリンを強力に分泌するが、血糖値が正常に近付くとインスリンを出さなくなるため、低血糖が起こらないという利点を有する。また、インクレチン関連薬の1つ「DPP-4阻害薬」はGLP-1やGIPの分解を抑え、生理的なレベルでインクレチンの血中濃度を上昇させる。一方、GLP-1受容体作動薬は注射なので1桁上の薬理的なレベルでインクレチンの血中濃度を上昇させることが可能だ。

自己注射薬であるGLP-1受容体作動薬は1日1〜2回投与する製剤が主流だったが、最近では週1回のものも登場した。現在、週1回投与の自己注射製剤には2種類ある。分子の大きさが異なり、食欲抑制作用に違いがある。1つは分子が大きいため作用時間が長い。脳内に入らないため、食欲抑制作用はほとんどないとされる。他方は分子が相対的に小さく脳内に入るため、食欲抑制作用を持つ。すなわち減量の効果も期待できる。

この2つは、患者の病態や年齢によって使い分ける。筋肉量が減少している糖尿病患者の場合は、減量は筋肉量の低下につながる可能性があるため、食欲抑制作用のないGLP-1受容体作動薬を使う。一方、肥満やメタボリックシンドロームの糖尿病患者の場合は、血糖値の低下とともに減量の効果も見込めるGLP-1受容体作動薬が適している。

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