2021年09月15日掲載
医師・歯科医師限定

急速進行性間質性肺疾患の早期診断に重要な皮膚所見

2021年09月15日掲載
医師・歯科医師限定

大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学教室 特任講師

植田 郁子先生

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎では特徴的な皮疹がみられる。また、治療抵抗性・予後不良の急速進行性間質性肺疾患(rapidly progressive fibrosing interstitial lung disease:RP-ILD)を併発することが知られており、早期に診断することが重要となる。

大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学教室の植田 郁子氏は、第120回日本皮膚科学会総会(2021年6月10~13日)で行われた教育講演の中で、抗MDA5 抗体陽性皮膚筋炎の早期診断に重要な皮膚症状や抗体について解説した。

抗MDA5抗体と急速進行性間質性肺疾患

皮膚筋炎(Dermatomyositis:DM)で検出される自己抗体は、細胞質抗体(抗ARS抗体、抗MDA5抗体)と抗核抗体(抗Mi-2抗体、抗TIF1抗体、抗NXP-2抗体、抗SAE抗体)がある。ELISAによる簡便な測定法が確立され、2014年には抗ARS抗体の測定が、そして2016年には抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1抗体の測定が保険適用となった。

抗MDA5抗体はDM患者のうち19~35%程度にみられる。抗MDA5抗体陽性の場合、皮疹のみで筋炎はみられないもしくは筋炎が生じても軽症となる一方、急速進行性間質性肺疾患の頻度が高いということがよく知られている。

抗MDA5抗体の発生機序と発症原因

MDA5分子は、自然免疫においてウイルス感染制御に関わるタンパク分子でRIG-1ファミリーに属しており、ヘリカーゼドメインと2つのcaspase recruitment domains(CARD)ドメインを持つ。このヘリカーゼドメインがウイルスの double-strand RNAを認識すると、CARDドメインがinterferon β promoter stimulation-1(IPS-1)と呼ばれるアダプター分子へのシグナル伝達を活性化する。さらにNF-κBを活性化し、Type1インターフェロンやそのほかの炎症性サイトカインを産生するという。

MDA5はピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルスなどのRNAウイルスを認識するため、これらのウイルスへの感染が抗MDA5抗体の自己免疫現象を誘発している可能性が指摘されている。また、遺伝的素因としてHLA-DRB1*0101、*0405の関与があるという報告があるものの、植田氏は「発症原因は不明」と強調した。

環境要因に関しては、川や湖、池などの近くに住む皮膚筋炎患者で抗MDA5抗体陽性となる頻度が高いという報告(RMD Open 2020;6)がある。さらに同じ報告から、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は10~3月の発症が多いとされている。

こうしたことから、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の発症において、感染症や水辺に生息する生物に媒介されるもの、あるいは季節的なものが原因となり得ると考えられるが「今後さらなる検討が必要」と植田氏は話す。

ILD、RP-ILD、DM、CADMの頻度

日本では、抗MDA5 抗体陽性患者のうち約90%が間質性肺疾患(Interstitial lung disease:ILD)を発症し、そのうちRP-ILDは50~75%ほどになるという。抗MDA5抗体陽性患者における国(地域)ごとのILD、RP-ILDの発症頻度を下表に示す。

続けて植田氏は、抗MDA5 抗体陽性患者における皮膚筋炎と臨床的無筋症性皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis: CADM)の頻度についても以下のように示した。

抗MDA5抗体陽性患者の臨床的な特徴

日本からの報告では、抗MDA5抗体陽性患者の臨床的な特徴として、抗Mi-2抗体や抗TIF1抗体陽性の場合と比較し、発熱と関節炎が多くみられるという。それに対して、筋力低下や悪性腫瘍の合併が少ないことも併せて報告されている。悪性腫瘍の頻度としては、全般的には10%未満が一般的な報告の頻度となっているという。一方で、抗MDA5抗体陽性患者の30%近くに悪性腫瘍があったという地中海沿岸からの報告もある。また、植田氏は「各報告を調べた限りでは、甲状腺に関連する悪性腫瘍の頻度がやや高い印象がある」と述べた。

特徴的な皮膚症状

皮膚症状に関しては、抗MDA5抗体陽性患者では抗Mi-2抗体・抗TIF1抗体陽性患者と比較して体幹の紅斑が少なく、皮膚潰瘍が高頻度に出現するという臨床的な特徴がある。検査値を比較すると、抗MDA5抗体陽性患者では筋力低下が少ないためCK値が低く、KL-6の値は間質性肺疾患に関連して高くなる。

また、抗MDA5陰性の患者と比較して陽性患者ではILD、手の腫脹、関節炎、そしてCADMの頻度が高いというアメリカからの報告も紹介された。さらに、手の皮膚症状に限定すると皮膚潰瘍が80%と高頻度にみられ、その発生部位はゴットロン徴候部位、爪囲そして肘に多いという結果も同報告から分かっている。
抗MDA5抗体陽性患者の症例では、ゴットロン徴候部位や爪郭部の皮膚潰瘍といった症状の頻度が高く、慢性化すると難治なことも多々あると、植田氏は自らの経験を述べた。

<ゴットロン徴候部位に生じた皮膚潰瘍>


植田氏より提供

そのほかの手の症状としては掌の丘疹が約60%、そしてメカニックスハンドも60%以上の頻度で生じる。掌の丘疹は逆ゴットロン丘疹・徴候とも呼ばれており、掌に鉄棒豆様の丘疹がみられる。

<掌の丘疹>


植田氏より提供

前出のアメリカからの報告によると、手以外の症状では、脂肪織炎が20%、脱毛が78%、肘膝の紫紅色斑が100%、口腔内の痛みと潰瘍が50%でみられたという。植田氏はこれに対して「脂肪織炎は大腿、臀部にみられることが多い印象があり、肘膝の紫紅色斑や口腔内潰瘍もよくみられる」との見解を示した。

植田氏は、そのほか抗MDA5抗体陽性例でみられる特徴的な皮膚症状についても解説した。抗MDA5陽性DM-ILDと抗ARS陽性DM-ILDを比較すると、抗MDA5陽性DM-ILDではMicrohemorrhage capillary disorganizationがみられるといい、これは血管障害に関連して起こると考えられるという。

抗MDA5抗体陽性例の初期症状として片側性のヘリオトロープ疹がみられることがある。この際に、片側性だという理由で、全身性疾患である皮膚筋炎ではないと安易に決めつけないことが重要だ。抗MDA5抗体陽性例に特徴的な皮膚症状である可能性も考え、特に注意して経過観察する必要があると植田氏は強調した。

また、同抗体陽性の場合には耳輪、対耳輪に紫紅色斑がみられることも多い。植田氏の経験では、同部位に潰瘍を形成したりする症例も頻繁にあるという。


<対耳輪の紫紅色斑と皮膚潰瘍>


植田氏より提供

抗MDA5、抗ARS、抗TIF1各抗体陽性患者の皮膚病変の病理組織学的特徴を比較した研究では、どの抗体に関してもinterface dermatitisが生じている点は共通していた。一方で、抗ARS抗体陽性例では乾癬様皮膚炎や湿疹反応が、抗MDA5抗体陽性例では血管障害が目立つという特徴を示した。

    I型IFNの皮膚筋炎への関与

    I型IFN反応タンパクであるmyxovirus resistance protein A(MxA)発現の違いを各抗体別にみると、特に抗MDA5抗体陽性例でMxAの発現がIFNαとIFNβにより誘発される。このことから、Ⅰ型IFNの上昇と、皮膚病変への関与が考えられるという。つまり、筋肉ではI型IFNの発現が低いのに対して、血液と皮膚という抗MDA5抗体陽性例において主な症状がみられる臓器で、このI型IFNが強く関与するということが示されている。

    バイオマーカーとしての抗MDA5抗体価とフェリチン

    抗MDA5抗体価は治療に反応しない患者において高いということが分かっており、「抗体価が予後を予測する因子となり得るのではないか」といわれている。

    実際、治療によって経過がよくなるとともに抗MDA5抗体価も下がる。しかし、ステロイドや免疫抑制剤を減量すると再燃する症例もあり、再燃時にはやはり抗MDA5抗体価も上昇してくることが確認されている。そのため、この疾患のモニタリングをするにあたって抗体価が有用となる可能性がある。しかしその一方で、抗MDA5抗体価は生命予後や肺病変、皮膚病変との関連がないとする報告もあり、植田氏は「今後も新たな報告を見ながら検討してく必要がある」と指摘した。

    また、植田氏はフェリチンが高値の症例で抗MDA5抗体陽性患者のDM-ILDが重症化する可能性が示唆されていることにも言及した。フェリチンはマクロファージの活性化と関連し、高値の場合は重症化が懸念される。ほかにバイオマーカーとしてLDHやKL-6、CD4+CXCR4+、IL-15、YKL-40、IL-6そしてIFNαなどが考えられていると述べ、講演を締めくくった。

    講演のまとめ

    • 抗MDA5 抗体陽性皮膚筋炎は急速進行性間質性肺疾患を併発することが多い。日本では、間質性肺疾患(ILD)は90%前後、急速進行性間質性肺疾患(RP-ILD)は50~75%で発症。

        • 発症原因は、ウイルス感染、遺伝的要因、環境要因などの報告があるが詳細は不明。

          • 抗MDA5 抗体陽性患者の皮膚症状として、軽度な手の浮腫、ゴットロン徴候部位や爪の皮膚潰瘍、掌の丘疹(逆ゴットロン丘疹)メカニックスハンドが高頻度でみられる。
          • 抗MDA5 抗体陽性患者の臨床特徴として、発熱が多く、関節炎が多いが、筋力低下や悪性腫瘍の合併は少ない。
          • 抗MDA5抗体陽性例の初期症状として片側性のヘリオトロープ疹がみられることがある。
          • 抗MDA5抗体価とフェリチンがバイオマーカーとなる可能性がある。

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