2023年06月29日掲載
医師・歯科医師限定

デジタル禁煙療法の有効性は――日本癌学会 がんを始めとする喫煙の健康に関する注目すべき文献紹介

2023年06月29日掲載
医師・歯科医師限定

MedicalNoteExpert編集部

日本癌学会は、会員向けに喫煙とがんに関する注目すべき学術論文を同学会のウェブサイトで定期的に紹介している。このほどピックアップしたのは、スマートフォンのアプリと主治医向けウェブ患者管理ソフト、モバイル呼気COチェッカーを用いたデジタル禁煙療法の効果を調べて報告した、正木 克宜・慶應義塾大学医学部呼吸器内科助教による論文「A randomized controlled trial of a smoking cessation smartphone application with a carbon monoxide checker」。その概要を紹介する。

52週目でも約半数が禁煙継続

正木氏らの研究グループは、自ら開発したデジタル禁煙療法「CureApp Smoking Cessation(CASC)」システムの有効性をテスト。CASC群の9週目から24週目までの継続禁煙率は63.9%で、対照群の50.5%と比較して有意に高かった。さらに、52週目まででもCASC群52.3%に対し、対照群は41.5%だった。この結果から研究グループは「標準的な対面カウンセリングと薬物療法を新しいスマートフォンアプリで強化したCASCシステムは、標準治療や最小限のサポートしか行わないコントロールアプリと比較して、長期継続禁煙率を大幅に改善した」と結論付けた。

アプリ使用は24週間、中止後も効果持続

CASCはニコチン依存症患者向けのスマートフォンアプリ、主治医向けの患者管理PCソフト、モバイル呼気COチェッカーで構成される。アプリには薬物療法と行動療法の治療効果を最大化するための禁煙デジタル日記やパーソナライズされたチャットボットなど4つの異なるコンポーネントがある。一方、医師向けのソフトでは、参加者の進捗状況を確認でき、臨床ガイドラインに従って効果的にカウンセリングする際のヒントを提供するなどの機能がある。

国内31の禁煙クリニックから参加者を募集し、無作為に抽出してCASC群(285人)と対照群(287人)に振り分けた。両グループともカウンセリングと薬物療法による標準的な禁煙治療を12週間受けるとともに、CASC群はアプリを24週間使用。対照群にはCASCアプリの基本機能のみを提供し、同期間使用した。両群とも24週目にアプリをアンインストール。アプリ使用中止後も最大52週間の継続禁煙率を評価した。

日本では2006年度から、ニコチン依存症患者の禁煙治療が保険適用となった。この治療は12週間に5回の受診でカウンセリングと、ニコチンパッチや禁煙補助薬「レバニクリン」などの薬物治療を受ける。しかし、9~12週目までの継続禁煙率は50~60%、9~24週目までは最大約40%、9~52週目までは30%以下と低く、より優れた治療手段が求められている。

そうしたなかで、スマホアプリを含むデジタル療法は禁煙の成功率を高めるための有望なツールとして期待されている。

論文はデジタル医療に関する査読済みジャーナル「npj digital medicine」に掲載された。

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