2023年06月09日掲載
医師・歯科医師限定

COVID-19によるがん薬物療法への影響――日本臨床腫瘍学会が第7波における実態調査の結果を報告

2023年06月09日掲載
医師・歯科医師限定

MedicalNoteExpert編集部

約3年にわたり続いた新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行は、がん診療にも多大な影響をもたらした。日本臨床腫瘍学会は2020年11月から「新型コロナウイルス感染症の蔓延下におけるがん薬物療法の影響調査*1」を実施。第3回*2の調査では、2022年7〜9月頃、いわゆる「第7波」におけるがん診療や薬物療法の実態について、同学会会員を対象としたWebアンケートが行われた。本記事ではアンケート結果を抜粋してお伝えする。

*1本調査は厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「新型コロナウイルス感染症による他疾患を含めた医療・医学に与えた影響の解明に向けた研究―今後の進行感染症発生時の対策の観点から-」(門田班)との協力実施によるものである

*2 第1回目の調査では第1波〜2波、第2回目の調査では第5波における影響を調査している

約45%ががん薬物療法に「変化あり」と回答

「COVID-19蔓延前(2020年2月まで)と比較して、第7波において自身が実践するがん薬物療法に変化があったか」との問いに対し、約45%が「変化があった」と回答。具体的な変更内容ならびに「該当あり」と回答した割合は以下のとおりである。

  • 寛解状態(あるいは落ち着いた状態)にある患者の維持療法を中断した:21.3%
  • 再発リスクの低い患者で、術後化学療法を中止・延期した:17.4%
  • 通常手術先行していた患者で、術前治療を実施した:10.7%
  • 注射薬レジメンから内服薬レジメンに変更した(補助療法):15.6%
  • 注射薬レジメンから内服薬レジメンに変更した(進行がん):17.1%
  • 投与間隔が長めのレジメンに変更した:25.3%
  • 投与時間(院内滞在時間)が短いレジメンに変更した:14.4%
  • 骨髄抑制の少ないレジメンに変更した:16.9%
  • 治療期間を延長あるいはスキップした:61.0%


次に「COVID-19蔓延前と比較して第7波では、COVID-19の影響を鑑みて、がん薬物療法に関する何らかの治療計画を変更したか(治療内容変更、治療中止・延期、投与間隔延長・減量・スキップなど)」の問いには、34.1%が「はい」と回答した。具体的な変更内容ならびに「該当あり」と回答した割合は以下のとおりである。

  • 術前・術後補助療法を変更した:20.9%
  • 緩和・姑息的治療を変更した:38.3%
  • 細胞傷害性抗がん剤を変更した:30.4%
  • 分子標的治療薬を変更した:18.9%
  • ホルモンor骨吸収抑制剤を変更した:5.0%
  • 免疫チェックポイント阻害薬を変更した:13.1%
  • 経口投与を経静脈内投与に変更した:2.5%
  • 経静脈内投与を経口投与に変更した:18.1%
  • 経皮投与を経静脈内投与に変更した:1.3%
  • 経静脈内投与を経皮投与に変更した:1.9%
  • ステロイド(支持療法を目的とした使用)を減量あるいは中止した:16.4%


そのほか「重症化リスク因子(高齢者、糖尿病、循環器疾患など)を持つ患者に対して、がん薬物療法の対応を変更したか」との問いに対しては、約29%が何らかの変更があったと回答した。

がん患者数への影響は――患者からの問い合わせは多数あり

「COVID-19蔓延前と比較して、第7波で診療したがん患者数に変化はあったか」との問いには、「変わらなかった」が60.2%と最多であり、約28%が「減少した」と回答した。なお、第5波の期間(2021年6月下旬〜9月頃)を対象とした第2回目の調査では、約40%が「減少した」と回答。“受診控え”はやや改善していたことがうかがえる。

また「がん薬物療法を受けている患者からCOVID-19を意識した治療に関する要望・問い合わせがあったか」という問いには、12.3%が「かなりあった」、45.8%が「少しあった」と回答した。

終末期ケア・緩和ケアには多大な影響が

最後に終末期ケア・緩和ケアに関する質問項目において「家族等の面会制限や付き添い禁止のため、終末期の患者の診療に苦慮したか」との問いには47.6%が「かなりあった」、41.0%が「少しあった」と回答。

さらに「面会制限や付き添い禁止のため、入院での緩和ケアや看取りの予定であった患者が在宅ケアや在宅看取りにせざるを得なかった」に対して、「かなりあった」が18.1%、「少しあった」が40.8%と回答している。COVID-19の蔓延が、がん患者の終末期ケア・緩和ケアへ与えた影響は大きいことが分かる。

なお「在宅ケアや在宅看取りをしたケースにおいて、在宅ケアや在宅看護の体制は満足のいくものだったか」という問いに対しては、約86%が満足と回答している。

アンケート回答者の背景

調査期間は2022年11月24日〜2023年2月26日、調査対象は日本臨床腫瘍学会の全会員。回答者の約80%が医師であり、次いで薬剤師、看護師の順に多かった。所属先は大学が32.7%、国公立病院が25.5%、がんセンターが15.9%、私立病院が20.4%で、病床数で見ると半数以上が500床以上の病院に所属していた。

所属先のCOVID-19患者の受け入れ態勢については、約97%の施設が何らかの形で患者を受け入れていた。受け入れ時の病院体制については92.9%がCOVID-19専用病棟を設置、32.3%が手術件数を制限したと回答。一方、化学療法の件数・内容を制限した施設は12.6%にとどまっていた。

参照文献
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
【第3回】新型コロナウィルス感染症の蔓延下におけるがん薬物療法の影響調査結果(第7波)
https://www.jsmo.or.jp/membership/committee/report/doc/20230511_01.pdf
【第3回】2回目(第5波)新型コロナウィルス感染症の蔓延下におけるがん薬物療法の影響調査結果との比較(第7波)
https://www.jsmo.or.jp/membership/committee/report/doc/20230511_02.pdf

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