2021年10月26日掲載
医師・歯科医師限定

好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断と治療

2021年10月26日掲載
医師・歯科医師限定

福井大学医学部 皮膚科学講座

宇都宮 慧先生

好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬の診療では、各疾患の特徴的な臨床像を把握したうえで、鑑別疾患や合併症に留意しながら診療を進めていく必要がある。福井大学の宇都宮 慧氏は第120回日本皮膚科学会総会(2021年6月10日~13日)で行われた教育講演の中で好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断と治療について、各診療ガイドラインに基づき解説した。

好酸球性筋膜炎について――疫学・症状・発症誘因

好酸球性筋膜炎は両側の四肢に紅斑、浮腫、浸潤を呈する皮膚線維化疾患であり、1974年にShulman氏によって発見された。平均発症年齢は47~57歳、男女の比率は1.3:2.1で男性よりも女性に多くみられる。

主な症状は四肢対称性の皮膚硬化と関節拘縮による運動制限だ。ただし、症状の程度は左右対称性がないことがあり注意が必要である。なお、通常顔や手指に症状は出現しない。

また発症誘因として運動や労作を考慮する必要があり、30~46%の症例で発症直前に激しい運動や労作、外傷の既往があることが分かっている。こうしたことから、傷害された筋膜における非特異的炎症と、組織から流出した抗原に対する自己免疫反応が発症機序の1つとして考えられている。

そのほか、感染症、薬剤(スタチンなど)、有機溶媒との接触などとの関連も示唆されている。

好酸球性筋膜炎の診断

続けて宇都宮氏は、好酸球性筋膜炎の診療ガイドラインに基づき、好酸球性筋膜炎の診断について解説した。本題のはじめに以下のとおり好酸球性筋膜炎の診断基準を示した。


大項目

・四肢の対称性の板状硬化

・但し,レイノー現象を欠き,全身性強皮症を除外しうる

小項目1

筋膜を含めた皮膚生検組織像で,筋膜の肥厚を伴う皮下結合織の線維化と,好酸球,単核球の細胞浸潤

小項目2

・ MRI等の画像検査で筋膜の肥厚

大項目及び小項目1ないし大項目及び小項目2で診断確定


好酸球性筋膜炎 診断基準・重症度分類・診療ガイドラインより引用

診断に有用な臨床所見

診療ガイドラインでは好酸球性筋膜炎の診断に有用な臨床所見として「orange-peel-like appearance」と「groove sign」を挙げている。

orange-peel-like appearanceは、病変部の腫脹とシワの形成によりオレンジの皮のような特徴的な外観を呈する所見である。約半数でみられ、経過の長い症例に多いといわれている。

またgroove signは表皮静脈に沿って皮膚が陥凹する所見で、患肢を挙上すると著明になるのが特徴だ。表皮と真皮上皮は線維化の影響を受けにくく可動性があるのに対し、真皮下層や血管周囲は可動性が悪いため、末梢血管の血流が減少すると内側から引っ張られて陥凹が生じるとされている。なお、groove signも約半数の症例にみられる。


好酸球性筋膜炎 診断基準・重症度分類・診療ガイドラインより引用

<挙上すると著明になるgroove sign>


Pinal-Fernandez I, et al. Lancet 384:1748, 2014より引用

血液検査の有用性

好酸球性筋膜炎の診断や疾患活動性の判定においては、末梢血好酸球数、血沈および血清アルドラーゼ値を参考にすることが推奨されている。

末梢血好酸球数は急性期に増えることが多く、そのほか血清IgG値や血清アルドラーゼ値の上昇、血沈の亢進がみられる。また末梢血好酸球数、血清アルドラーゼ値、血沈は疾患活動性とも相関しており、その判定に有用とされる。

なお好酸球に関しては、末梢血における増多が約63~86%、組織における浸潤が約65~80%に認められるものの、中にはこれらの所見が認められないこともある。宇都宮氏は「好酸球は診断の手がかりとしては有用であるが、臨床像や検査所見、組織所見と併せて総合的に診断する必要がある」と述べた。

画像検査の有用性

診断における画像検査としては第一にMRIが推奨されている。MRIを行うことで筋膜の浮腫や炎症の有無を同定でき、生検が難しい症例の診断においても有用だ。なおMRIは診断だけでなく、生検部位の決定や病勢・治療反応性の評価にも役立つ。

またMRIには劣るものの、超音波検査も診断に有用とされている。好酸球性筋膜炎では、超音波検査で皮下組織の菲薄化を認める。またプローブで皮膚を圧迫すると、皮下組織の圧縮率がほかの線維化疾患に比べて有意に減少することも分かっている。

皮膚生検の有用性

皮膚生検も好酸球性筋膜炎の診断に有用だ。皮膚生検の方法としては、皮膚から筋膜までを一塊として採取し評価することが、診療ガイドラインにて推奨されている。

病初期には筋膜・皮下組織深部の浮腫と多彩な炎症細胞の浸潤が認められるが、進行に伴い筋膜の肥厚や、皮下組織・真皮下層における膠原線維の膨化・増生が主体となる。

多症例に対する検討では、膠原線維の膨化・増生は40~70%、好酸球浸潤は65~80%程度、皮下脂肪織の隔壁の肥厚は半数以上にみられた。また筋膜肥厚はほぼ全例に認められており、診断において重要な所見となると宇都宮氏は言及した。

全身性強皮症との鑑別

好酸球性筋膜炎の診断では、全身性強皮症との鑑別が必須である。全身性強皮症では好酸球性筋膜炎にはない以下のような特徴が出現する可能性があるため、診断時にはこれらについて確認することが大切だ。

・手指・顔面の皮膚硬化

・爪郭部毛細血管異常

・抗核抗体陽性

・全身性強皮症特異的自己抗体陽性

そのほか、orange-peel-like appearanceや好酸球増多の有無についても鑑別の参考となる。

留意すべき合併症

好酸球性筋膜炎の合併症としては以下のような疾患が報告されている。

・限局性強皮症

・自己免疫性甲状腺炎

・全身性エリテマトーデス

・関節リウマチなどの自己免疫性疾患

・再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、悪性リンパ腫などの血液疾患

・前立腺がんや乳がんなどの内臓悪性腫瘍

宇都宮氏は「診断時の精査や経過中には、これらの合併症がないか十分留意することが重要である」と強調した。

好酸球性筋膜炎の治療

副腎皮質ステロイドの全身投与の有用性

好酸球性筋膜炎の治療では、副腎皮質ステロイドの全身投与が初期治療として有効であり、一般的にはプレドニゾロン0.5~1.0mg/kg/dayの経口投与で行われることが多い。また、ステロイドパルス療法を施行した症例では、施行しなかった症例に比べて完全寛解率が高い傾向があるとの報告もある。そのため、症例によってはステロイドパルス療法を考慮する。

また、副腎皮質ステロイド治療に抵抗性がある場合には、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンなどの免疫抑制剤の使用も治療の選択肢となる。特にメトトレキサートについては有効性を示す報告が多数ある。

長期観察例

ここで、好酸球性筋膜炎の長期観察例について調査した研究が紹介された。本研究では長期観察した35例のうち、半数以上に手関節の可動域低下、3分の1に手関節と足関節の可動域低下を認めた。また高齢発症、初診時の重症度、体幹に及ぶ病変、炎症マーカーの上昇、モルフェアの合併などが、その後の重症度と相関することも分かっている。このことから宇都宮氏は「こうしたリスクを持つ患者に対しては、長期的に機能障害を起こさないように注意して治療していくことが重要だろう」と述べた。

硬化性萎縮性苔癬の症状

次に宇都宮氏は硬化性萎縮性苔癬に話題を移した。同疾患の臨床像について、以下に示す。


宇都宮氏より提供

まず成人女性の外陰部(写真上段)では、象牙色の丘疹や局面を呈し、紫斑、水疱、潰瘍、出血がみられ、多彩な炎症像を示していることが分かる。またケブネル現象がみられたり、病変が性器や肛門周囲に広がって8の字型を示したりすることもある。進行すると、口部の狭窄や瘢痕による小陰唇の消失、陰核包皮の閉鎖などをきたす。

また成人男性(写真下段)では、包皮や冠状溝、亀頭部に好発し、陰茎に生じることはまれである。包皮が締め付けられるような自覚症状とともに、勃起障害や勃起時の痛み、排尿障害などが生じることがある。女性の場合とは異なり、かゆみや肛門周囲の病変は多くない。

また、女児の場合には成人女性と同じような症状を呈するが、出血や肛門周囲の病変が目立つことから性的虐待と間違われることもあり注意が必要だという。男児の場合は、通常包皮に生じて包茎を呈することが多く、肛門周囲の病変は少ないとされている。

成人女性では以下のように外陰部以外に症状がみられることも多い。その場合、体幹上部、腋窩、臀部、大腿外側に好発する。外陰部と同様に象牙色の局面を呈して、出血やケブネル現象を伴う。


宇都宮氏より提供

硬化性萎縮性苔癬の診断

続けて宇都宮氏は、硬化性萎縮性苔癬の診療ガイドラインに基づき、硬化性萎縮性苔癬の診断について解説した。以下に硬化性萎縮性苔癬の診断基準を示す。


1. 境界明瞭な萎縮を伴う白色硬化性局面がある.

. 病理組織学的に,過角化,表皮の萎縮,液状変性,真皮内の浮腫,リンパ球浸潤,膠原線維の硝子様均質化(透明帯)などの所見がみられる.

上記の1と2を満たせば硬化性萎縮性苔癬と診断.

ただし,以下の疾患を除外する:限局性強皮症,慢性湿疹,尋常性白斑,扁平苔癬


硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドラインより引用

また、以下の症例からも分かるように硬化性萎縮性苔癬は扁平苔癬と似た症状を呈することがあるため、扁平苔癬に特徴的な頬粘膜や爪郭の病変を確認したうえで診断を進める必要がある。


宇都宮氏より提供

そのほか、紅色肥厚症、外陰部ヘルペス、固定薬疹、乳房外バジェット病なども鑑別診断として念頭に置く必要があるという。

異なる病名で呼ばれることもある

硬化性萎縮性苔癬は、近年「硬化性苔癬」という病名で呼ばれることも多くなっている。また、婦人科領域では女性の外陰部にみられるものを「kraurosis vulvae」や「hypoplastic dystrophy」、泌尿器科領域では男性の外陰部にみられるものを「balanitis xerotica obliterans」と呼ぶこともある。

同じ疾患でも異なる病名で呼ばれることもあることから、宇都宮氏は「診断・治療の方法や方向性が統一されていないことを念頭に置いて診療する必要があるだろう」との見解を示した。

診断に有用な臨床所見

臨床像は先に示したとおりだが、臨床所見の特徴として男女比は1:10で女性に多いことが挙げられる。また女性における発症のピークは初経前と閉経前にあり、婦人科を受診した女性の1.7%にみられたとの報告もある。男性の場合には30~50歳での発症が多い。

有棘細胞がんの合併――皮膚生検の有用性

有棘細胞がんなどの悪性腫瘍の合併が疑われたり、他疾患との鑑別が難しかったりする場合には皮膚生検の実施が推奨されている。

表皮の皮膚生検では、初期には過角化や毛孔角栓がみられ、進行すると表皮は萎縮して表皮突起が扁平化する病理像を呈する。なお表皮の厚さはさまざまである。

真皮の皮膚生検では、帯状にヒアリン化して無構造で浮腫を認め、血管拡張や赤血球の血管外漏出を伴うこともある。

表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するという報告がある。また、ある研究では507例の女性の硬化性萎縮性苔癬のうちコントロール不良例(150例)で約5%に有棘細胞がんを認めたことも報告されている。宇都宮氏は「コントロール不良例については、経過中に悪性腫瘍の合併がないか留意する必要があるだろう」と注意を促した。

自己免疫性疾患の合併

硬化性萎縮性苔癬では自己免疫性疾患を合併することも多く、女性の硬化性萎縮性苔癬のうち約12%で甲状腺疾患、約6%で白斑、約2%で自己免疫性貧血を合併したとの報告もある。また宇都宮氏が福井大学にて行った調査でも、硬化性萎縮性苔癬の約35%に血清中自己抗体の陽性を認めたという。


宇都宮氏より提供

自然軽快について

硬化性萎縮性苔癬は、小児発症例においては自然軽快することも少なくない。そのため「小児の診療においては自然軽快の可能性があることを念頭において治療にあたることが大切だ」と宇都宮氏は述べた。

硬化性萎縮性苔癬の治療

第一選択薬は副腎皮質ステロイド

外陰部の硬化性萎縮性苔癬の治療では、副腎皮質ステロイド外用が第一選択とされており、過角化、出血、亀裂、びらんに対する有効性が示されている。ただし萎縮、瘢痕、白色調の変化は残存する場合が多いとされている。

具体的な外用方法としては、英国のガイドラインではクロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏外用(strongest)を1日1回4週間継続することが推奨されている。その後は隔日4週間外用、週2回4週間外用と徐々に使用回数を減らしていき、再燃した場合には再び使用回数を増やすという方法をとる。

また、外陰部以外の硬化性萎縮性苔癬に対しても同様に副腎皮質ステロイド外用を行う。ただし、外陰部に比べて病変への効果は弱いとされている。

タクロリムス軟膏も治療選択肢となる

副腎皮質ステロイド外用よりは治療効果は劣る可能性はあるが、タクロリムス軟膏の外用も治療の選択肢となる。なお、タクロリムス軟膏には皮膚萎縮が生じない利点がある。

宇都宮氏はタクロリムス軟膏で効果が得られた以下の症例を提示した。


宇都宮氏より提供

本症例は副腎皮質ステロイドによる長期加療で反応不良になり亀頭部の痛みやびらん、排尿痛を認めた患者であるが、タクロリムス軟膏を外用したところ症状の改善がみられたという。

光線療法や外科的治療

そのほかPUVA、UVA1、narrow band UVBといった光線療法や外科治療も治療の1つとなることがある。外科治療としては悪性腫瘍に対する切除術、尿道狭窄に対する尿道拡張術や再建術などが挙げられる。

講演のまとめ

宇都宮氏は好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬についてそれぞれ以下のようにまとめた。

好酸球性筋膜炎

・中高年に発症のピークがあり、激しい運動や外的要因が誘因となる

・モルフェア、自己免疫疾患、血液疾患を合併することがある

・四肢の板状の硬化を呈するが、全身性強皮症と異なり、顔面や指の硬化、血管障害、内臓病変、特異抗体はみられない

・長期的には関節拘縮が半数以上に生じるという報告があるため、経過中は身体的機能障害に注意する

・診断においては、MRIや皮膚生検(皮膚から筋膜まで一塊として採取)が有用

・治療においては、少量から中等量のステロイド剤が頻用される

硬化性萎縮性苔癬

・外陰部病変の診断時には、疾患ごとに異なる性差や好発部位、発症頻度を念頭においた鑑別が重要

・診察時は甲状腺疾患や白斑などの自己免疫性疾患のスクリーニングを十分に行う

・治療はステロイド外用が基本となる

・コントロール不良例では悪性腫瘍の合併に十分留意する必要がある

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