2021年07月21日掲載
医師・歯科医師限定

【論文紹介】Cell-Free Virus-Host Chimera DNA From Hepatitis B Virus Integration Sites as a Circulating Biomarker of Hepatocellular Cancer

2021年07月21日掲載
医師・歯科医師限定

スタンフォード大学医学部 微生物学・免疫学教室

關場 一磨先生

タイトル(和文)

肝細胞癌マーカーとしてのHBVゲノム組み込み由来cell-freeウイルス-宿主キメラDNA

論文選択理由

B型肝炎は未だ世界中で2億5千万人以上が罹患し、毎年約90万人が肝細胞癌などの合併症で死亡している。特に、肝細胞癌診療では、根治術の第一選択である肝切除後の再発率の高さが問題となっており、その予防法はもちろんのこと、診断技術の向上が求められている。造影CTやMRIといった画像検査は感度・特異度ともに良い診断能を誇るが、利便性やコストの問題を抱える。一方で、α-fetoprotein (AFP)といった腫瘍マーカーの測定は比較的簡便かつ安価であるが、特異度は41〜65%と高くない。

そうした中、新たな診断法として近年注目を集めているのが、cell-free tumor-specific DNA (ctDNA) によるリキッドバイオプシーである。末梢血中に含まれる腫瘍細胞由来の循環DNAを測定する本手法は、従来の腫瘍マーカーに比べて、その由来が明確であり腫瘍の早期発見マーカーとして期待されている。

しかしながら、早期の肝細胞癌においては、ctDNAと正常細胞由来DNAとの区別が難しく、ctDNA検出率は9〜21.2%と低いままであった。そこで、本紹介論文はそうした制約を乗り越えるためにHBVのゲノム組み込みに着目しており、ctDNAの肝細胞癌への実用化へ向けた重要かつユニークな研究であると考え、選択した。

要旨

  • HBV DNAは宿主ゲノムへの組み込みが起こることが知られており、これは主要な発癌因子として働く。
  • 肝切除術を受けた50名のHBV関連肝細胞癌患者に対して、切除標本を次世代シークエンスに供したところ、44名(88%)でHBVゲノム組み込みを認めた。
  • 同定されたHBVゲノム組み込みに由来するウイルス-宿主キメラDNA(virus-host chimera DNA, vh-DNA)をdroplet digital PCR法で血漿から定量したところ、43名(98%)で検出され、その量は腫瘍径との相関を認めた。
  • 術後2ヶ月で血漿vh-DNAが陽性だった患者群では90%(9/10)で1年以内の再発を認めたのに対し、陰性だった患者群では38%(13/34)であった。
  • 再発患者の77%(17/22)では、再発時に同一のvh-DNAを認め、同一クローンに由来する癌と考えられた。

以上より、vh-DNAはHBV関連肝癌における新たな腫瘍検出マーカーとして有望であると考えられる。また、腫瘍切除後の残存腫瘍量およびクローン性の良い指標ともなり得る。

議論・解釈

  • 非腫瘍部におけるゲノム組み込みを拾い上げてしまっている可能性のさらなる否定のために、非腫瘍部のシークエンスデータも論文中で提示して欲しかった。
  • 今後、被験者数を増やして、vh-DNAの中でも予後や再発率と直結するものが同定できれば、より簡便な腫瘍検出マーカーとなり得る。
  • HBV関連肝癌という限られた集団にしか適用できない手法であり、現時点では広く適応される研究ではないが、ウイルスのゲノム組み込みを起こす他のウイルス(ヒトパピローマウイルスなど)にもコンセプトは応用可能であり、今後の研究発展が期待される。

論文からの学び

近年注目されているリキッドバイオプシーの新たな発展形を示した論文である。既知(cell-free DNA)と既知(HBVゲノム組み込み)とを組み合わせて、新たな手法を生み出すという意欲的な姿勢に感銘を受けた。今後は一般的な体細胞遺伝子変異の検出のみならず、このような疾患ごとに個別化したリキッドバイオプシー技術が発展してくることが見込まれる。

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