2021年12月16日掲載
医師・歯科医師限定

糖尿病治療薬から“大化け”したSGLT2阻害薬、腎保護作用も――国際腎臓学会選出、60+1の「Breakthrough Discoveries:画期的な発見」の1つに

2021年12月16日掲載
医師・歯科医師限定

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 科長/教授

南学 正臣先生

現在、国際腎臓学会(ISN)の次期理事長としての活動を行っている。ISNは、2020年には学会発足から60周年を記念し「Breakthrough Discoveries:画期的な発見」と題した企画を開催した。これは、全世界のISN会員にこれまで腎臓病学の進歩にもっとも多大な影響を与えた歴史的研究の候補を募り、投票の結果に基づき上位60+1の研究を選出したものである。各月5つずつ画期的な発見・研究に焦点を当てた(ただし発見順に並べたもので、重要度に差はない)。たとえば顕微鏡によるネフロンの発見、クレアチニンの日常的な測定が腎機能推定になることを示した研究など腎臓病学の礎となるものから、最新の研究まで幅広い研究が選出されている。今回はその中から「SGLT2の同定およびSGLT2阻害薬の臨床応用」について紹介したい。

「Identification of SGLT2 and Clinical Application of its Inhibitor:SGLT2の同定およびSGLT2阻害薬の臨床応用」が12月に発表された。ご存じのようにSGLT2阻害薬は元々糖尿病の治療薬として登場したものだが、近年の大規模臨床試験により心血管系/腎保護の作用が証明された。いわゆる“大化け”した薬の1つである。

SGLT2阻害薬に関してはリアルワールド研究も進んでいる。日本腎臓学会(JSN)と日本医療情報学会(JAMI)が合同で作成した慢性腎臓病患者包括的データベース(J-CKD-DB)を活用したリアルワールドデータ解析による新たなエビデンス構築がその1つだ。J-CKD-DBは電子カルテのデータベースで、厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(Standardized Structured Medical Information Exchange:SS-MIX)のシステムを利用することで、フォーマットが異なる各病院のカルテでも標準化されたデータが自動的に中央のサーバーに集積されるというもの。医師の入力が不要で、かつデータが正確であるという利点があり、現在では20万人規模の慢性腎臓病(CKD)患者のデータベースが構築されている。J-CKD-DBの解析により、SGLT2阻害薬を服用している患者は、腎臓の複合エンドポイントとなる末期腎不全がそのほかの薬剤を使っている患者に比して有意に少ないことが分かった。

現在、SGLT2阻害薬は糖尿病ではない腎臓病の患者の治療にも使われており、中でも「ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠」は慢性腎臓病の適応でも保険収載されている。このような経緯を踏まえると、SGLT2阻害薬の新たな作用の発見は非常にインパクトの大きい出来事だったといえるだろう。

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