2021年09月02日掲載

がん細胞の「不均一性」は時空間的――シングルセル解析で個々の性質を把握し、より精密な研究が可能に

2021年09月02日掲載

慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門 教授

佐谷 秀行先生

heterogeneity、つまり“不均一性”が、これからがん研究の中では非常に大きなトピックになってくるであろう。がん細胞は、それぞれ全部が違う。それぞれの人によってがんの個性があり、がんの性質がある程度違うので、その違いを認識した治療を考えるという個別化医療やプレシジョンメディシン(precision medicine)=精密医療がこの10年、注目されてきた。

今度は、同じがん組織の中の細胞そのものがそれぞれ違う性質を持ち、不均一であること――それぞれの患者によって個性があるだけでなく、がん組織の中の細胞そのものに“個性”があるということが分かってきた。

しかも、時空間的な不均一性がある。あるポイントだけを見てもさまざまな性質を持った細胞があるが、時間の経過とともにその細胞が変化をしていくことも分かってきている。そう考えると、がんの治療が難しいのもうなずける。

現在、約6割の患者は治療後10年の生存を確保できているが、残りの難しい4割は、そのようながん細胞の未知の性質によって解明されていなかった部分があるがゆえなのであろう。

今まではそれを解析する手段がなかったが、単細胞解析=シングルセル解析という新しい手法ができたことによって、がん組織を構成している1個1個の細胞がどういう性質を持っているか     解析できるようになった。

「がん組織の中でこういった性質を持った細胞がここにいて、こういった性質を持った細胞がまた別のところにいて、それらをどのようにしてマネジメントしていくか」ということが解析によって分かり、がんの研究がますます精密な領域に入っていくだろうと思っている。

そこにAIによる画像解析、新たなイメージング装置など理工学系のテクニック、あるいは化学や情報工学など新しい知識と技術が加わることによって、さらに新たな治療法が開発されてくるであろう。

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