2021年10月04日掲載
医師・歯科医師限定

蕁麻疹に対するオマリズマブ治療

2021年10月04日掲載
医師・歯科医師限定

広島大学大学院 皮膚科学 准教授

田中 暁生先生

蕁麻疹は、掻痒を伴う浮腫性紅斑や皮疹の発生・消退を繰り返す、罹患率の高い皮膚疾患である。ヒトIgEに対するモノクローナル抗体製剤であるオマリズマブは、蕁麻疹の病型の1つである特発性の慢性蕁麻疹への治療薬として、2017年3月から保険適用となっている。

広島大学大学院医系科学研究科 皮膚科学准教授 田中暁生氏は、第120回日本皮膚科学会総会(2021年6月10~13日)にて行われた教育講演の中で、蕁麻疹の病態・病型と薬物治療、オマリズマブの作用機序について解説した。

蕁麻疹の病態と病型分類

蕁麻疹という疾患では、外来抗原や物理的刺激などの原因により皮膚マスト細胞が活性化した結果、脱顆粒が起こり、ヒスタミンを始めとするさまざまな化学伝達物質が神経を刺激することで、微小血管からの血漿漏出や痒みという症状を引き起こす。

「蕁麻疹を診療するうえで初めに行うべきことは、病型の診断である」と、田中氏は語る。

蕁麻疹の診療ガイドラインでは、病型を以下のように大きく4つに分類している。

  • 特発性の蕁麻疹
  • 刺激誘発型の蕁麻疹
  • 血管性浮腫
  • 蕁麻疹関連疾患

さらに特発性の中には、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹、刺激誘発型にはアレルギー性蕁麻疹、物理性蕁麻疹、コリン性蕁麻疹といった種類が存在する。


蕁麻疹診療ガイドライン2018年版より引用

田中氏が診療を行っている広島大学病院で集計した結果、蕁麻疹患者のほとんどが特発性であり、そのほか物理性が10%、コリン性が6.5%、アレルギー性が5.4%であったと報告した。

蕁麻疹の症状と原因

特発性の蕁麻疹

特発性の蕁麻疹で見られる皮疹の形状は多岐にわたっており、見た目だけでは蕁麻疹の病型を判断するのは難しいことが多いという。

田中氏は、判別しやすい特徴として「特発性の場合、症状が毎日出没し、その多くが夕方から朝にかけてピークを迎える」という点を挙げた。受診した時間には症状が落ち着き、夜間に悪化するということも頻繁にあるのだという。

病因に関して、急性蕁麻疹の多くは感染症やストレスが引き金になっているが、慢性蕁麻疹の場合は明確な原因は判明しないことも多く、田中氏はこの疾患が患者にとって対処しづらいものであることを訴えた。

刺激誘発性の蕁麻疹

一方、刺激誘発性の蕁麻疹では、原因が明確である。また、症状の出現は原因となった刺激を受けてから1時間以内に起こりやすく、さらに消退も比較的早いことが特徴に挙げられる。

田中氏は「刺激誘発性の蕁麻疹は、患者自身も原因や対処に気付きやすい」と、特発性蕁麻疹との違いを語った。たとえば、アレルギー性の蕁麻疹は原因物質曝露の1時間ほど後に発症し、物理性蕁麻疹では接触部位に一致して紅斑・疱疹が現れる。またコリン性では、発汗刺激により点状の小さい疱疹が多発する、などの具体例が紹介された。

蕁麻疹の診療方針と薬物治療のステップ

蕁麻疹診療の方針に関して、刺激誘発型の蕁麻疹は日常生活の中で原因となる負荷因子への対策を立てながら、薬物療法を併用する一方、自ずと発症する特発性の蕁麻疹においては、薬物療法が中心になるという。

さらに田中氏は「まずは負荷因子の回避や薬物治療などによって症状が現れない状態となることを目指すが、最終的には、無治療で症状が現れない状態がゴールとなる」と、診療ガイドラインで示されている長期的な目標についても言及した。

特発性の慢性蕁麻疹に対する薬物治療は、Step1からStep4までを段階的に進めていくよう、診療ガイドラインにて推奨されている。

治療の最初となるStep1では抗ヒスタミン薬が投与される。単剤で効果を得られない場合には、増量するかほかの抗ヒスタミン薬に変更、あるいは併用することとされている。それでも効果が不十分な場合にはStep2へ移行する。この段階では、H2結抗薬や抗ロイコトリエン薬をStep1の薬剤と併用する。症状が重篤な場合は、Step3として少量の副腎皮質ステロイドの内服や、オマリズマブあるいはシクロスポリンとの併用が選択され、最終的にはStep4の試行的治療を考慮することとなる。


蕁麻疹診療ガイドライン2018年版より引用

オマリズマブによる特発性の慢性蕁麻疹の治療

ここで田中氏は、Step3で選択される抗IgE抗体製剤であるオマリズマブについて詳しく解説した。

オマリズマブは、遊離IgEのCε3領域に直接結合することで、マスト細胞上のIgE受容体へのIgE結合を阻害し、結果として細胞表面のIgEおよびIgE受容体自体を減少させる作用をもつ薬剤であり、現在は特発性の慢性蕁麻疹への治療薬としてのみ保険適用となっている。

田中氏講演資料より


しかしながら、先述のとおり慢性蕁麻疹の病態は明らかにされていない部分も多く、田中氏は「なぜオマリズマブは慢性蕁麻疹に有効なのか」と疑問を示した。

これまでに、IgE または高親和性IgE受容体(FcεRI)に対する自己抗体の存在が、慢性蕁麻疹の病態に関与している可能性が報告されている。また、感染や疲労が病因となる場合にも、発症機序にIgEが関係していると推測され、そこに抗IgE抗体製剤であるオマリズマブが作用しているとも考えられる。


ここで田中氏は、最近、好塩基球が慢性蕁麻疹の病態に大きく関わることが示されていることについて触れた。

具体的には、末梢血中の好塩基球数が減少する・好塩基球のIgE受容体刺激に対する応答性が低下する・病変部に好塩基球が浸潤する、といった報告がなされている。また、田中氏らの自験では、好塩基球表面のIgE受容体の発現量が上昇するという結果も得られたという。

そして、「オマリズマブの作用機序にも好塩基球が関係すると推測される」と田中氏は続けた。オマリズマブは比較的早期に症状を緩和できることが知られているが、こうした早い時期に病態の中で見られるのは、好塩基球表面のIgE受容体の減少であることが分かっている。

効果発現時期を鑑みると、オマリズマブは、好塩基球の活性化の抑制に大きく関与しているのであろう、と田中氏は語った。

さらに、オマリズマブの効果が得られる時期について、田中氏は自施設でのデータを症例の詳細とともに紹介し、「オマリズマブの効果の判定時期は長くても3か月が妥当であろう」と論じた。

刺激誘発性の蕁麻疹とオマリズマブ

オマリズマブは刺激誘発性の蕁麻疹への効果も報告されている。蕁麻疹の原因となる刺激がマスト細胞を活性化させる機序の全容はまだ明らかでないにもかかわらず、抗IgE抗体製剤であるオマリズマブが治療効果を持つ可能性が示されているのだという。今後更なる知見が得られることが期待される。

現在開発中の蕁麻疹治療薬

最後に田中氏は、新しいトピックスとして国内で現在開発中の蕁麻疹治療薬について紹介した。オマリズマブとは異なるターゲットにアプローチする治験も進行しているという。

現在国内で第II相試験が進行している薬剤は、TSLPに対するテゼペルマブや、BTKに対するLOU064が挙げられる。また第III相試験として、IgEに対する別の抗体製剤であるリゲリズマブや、アトピー性皮膚炎の治療薬として知られるデュピルマブの治験が進行中となっている。

講演のまとめ

田中氏は、以下の点を再度強調したうえで、本講演を締めくくった。

  • 特発性の慢性蕁麻疹や刺激誘発型の蕁麻疹に対して、オマリズマブによる治療は有効である
  • 蕁麻疹の病態は、いまだ十分には解明されていない
  • オマリズマブが蕁麻疹に効果を発揮する機序も不明な点が多く、さらなる知見が求められる

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