2022年12月02日掲載
医師・歯科医師限定

クッシング症候群

2022年12月02日掲載
医師・歯科医師限定

奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学講座 教授

高橋裕先生

ポイント

  • クッシング症候群は、慢性のグルココルチコイド過剰によって引き起こされ、さまざまな合併症を引き起こし生命予後が悪化する疾患である
  • 診断には特徴的なクッシング徴候が有用である
  • クッシング症候群の鑑別診断ではまず医原性(外因性ステロイド投与)を除外し、次にACTH依存性とACTH非依存性かを鑑別する
  • ACTH依存性クッシング症候群は、ACTH産生下垂体腫瘍あるいは異所性ACTH症候群、異所性CRH症候群による
  • ACTH非依存性クッシング症候群は、副腎腺腫、副腎がん、過形成などによる
  • 原因の同定には、画像診断、デキサメタゾン抑制試験をはじめとする負荷試験が有用である
  • クッシング症候群に対する治療には、手術療法、放射線療法、薬物療法の3つがあり

手術療法による原発巣の摘出が第一選択だが、困難な場合には薬物療法や放射線療法が行われる

概要

疫学

近年の日本におけるクッシング症候群の患者数は不明だが、1965~1986年に行われた全国調査では年に平均約100例が新たに発症していると推定されている。しかし、実際にはこれよりも多くの患者がいると考えられている。

病態

クッシング症候群は、グルココルチコイドの慢性的な過剰産生に起因し、特徴的な身体徴候(クッシング徴候)と非特異的症候(糖・脂質・骨代謝異常、高血圧など)を呈する全身疾患である。

グルココルチコイドの過剰の原因には、内因性コルチゾール過剰および外因性ステロイドによるものがある。

内因性コルチゾール過剰が、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)自律性分泌が原因であるかどうかで、ACTH依存性クッシング症候群とACTH非依存性クッシング症候群に分けられる。

ACTH依存性クッシング症候群には、ACTH産生下垂体腫瘍が原因のクッシング病、異所性ACTH症候群、異所性CRH症候群が含まれる。また、ACTH非依存性クッシング症候群は、副腎に原因がある副腎性クッシング症候群であり、その原因として副腎腺腫、副腎がん、過形成などが挙げられる。

リスク因子

クッシング症候群の主な原因は副腎皮質腺腫であり、そのほか両側副腎の結節性過形成、下垂体腫瘍、肺がん、薬剤などが挙げられる。また、副腎腫瘍や結節性過形成に関しては原因となる遺伝子変異が同定されている。

診断方針

診断基準

クッシング症候群では、中心性肥満、満月様顔貌、野牛肩、皮膚の菲薄化、腹部の赤色皮膚線条、近位筋筋力低下、皮下いっ血などの身体的徴候がみられる。また、血糖値上昇、血圧上昇、コレステロール上昇、易感染性、骨粗鬆症、月経異常、うつ症状なども起こす。

診断ではまず薬剤による医原性クッシング症候群を除外する必要がある。そのうえで、ホルモン検査(血中ACTH,血中コルチゾール、尿中遊離コルチゾール、血中DHEA-S値の測定)、負荷試験、CTやMRIなどの画像検査をもとに原因を同定し、診断を確定する。

検査方法

ホルモン検査

医原性クッシング症候群の除外とともに、血中ACTH、血中コルチゾール、血中DHEA-S、尿中遊離コルチゾール(蓄尿)を測定する。血中DHEA-SはACTH依存性の鑑別や副腎がんの鑑別に有用である。

血中ACTH、血中コルチゾール、血中DHEA-S、尿中遊離コルチゾール(蓄尿)で正常~高値を示す場合にはACTH依存性クッシング症候群を疑い、一方で血中ACTHが抑制、血中コルチゾールが正常~高値、尿中遊離コルチゾールが高値となる場合にはACTH非依存性クッシング症候群と診断する。

負荷試験

負荷試験には、デキサメタゾン抑制試験、DDAVP試験、デスモプレシン試験、CRH試験がある。

ACTH とコルチゾールには、早朝~午前に高値となる一方、夕方~夜間は低値となる日内変動がある。デキサメタゾン抑制試験において、深夜にデキサメタゾンを服用することで健常人では翌朝のACTH、コルチゾールが抑制される。ACTH非依存性クッシング症候群では副腎腫瘍からのコルチゾール自律性のため、翌朝の血中コルチゾールが抑制されない。またACTH依存性クッシング症候群のクッシング病では少量のデキサメタゾンでは抑制されないが大量のデキサメタゾンで抑制される。異所性ACTH症候群では大量のデキサメタゾンでも抑制されない。

DDAVP試験はクッシング病の診断に有用であり、CRH 試験はクッシング病の確定診断のために行われる。

CT・MRI

ACTH非依存性クッシング症候群では主に副腎腫瘍が原因であることから、腹部CTまたはMRIで腫瘍を確認する。また、ACTH依存性クッシング症候群において負荷試験から下垂体腫瘍が原因のクッシング病が疑われる場合には、下垂体造影MRIで下垂体腫瘍の存在の有無を確認する。ただし、1cm未満の小さな腫瘍が多く下垂体腫瘍の検出率は60~70%といわれている。

治療方針

クッシング症候群の治療目標は、グルココルチコイド過剰によって生じる合併症の進行を抑え、主な死因である心血管障害、感染症を予防することである。

治療の第一選択は手術療法による原発巣の摘出であるが、病状に応じて薬物療法や放射線療法が選択される。

手術療法

下垂体腫瘍が原因のクッシング病、異所性 ACTH 症候群、副腎腺腫や副腎がんなどが原因の副腎性クッシング症候群では、手術療法によってこれら原発巣を摘出する。下垂体腫瘍では経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術が第一選択である。

副腎腺腫の場合には一側性副腎腺腫、副腎がんの場合には腹腔鏡下副腎摘除術が第一選択であり、両側性の場合は個々の病態に応じて両側副腎摘除や一側副腎摘除+コルチゾール合成阻害薬による薬物療法を行う。

放射線療法

放射線療法は主にクッシング病に対して用いられ、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術によっても腫瘍が残存している、あるいは摘出困難な再発の場合に考慮する。

薬物療法

クッシング病は下垂体腫瘍によるACTHの過剰産生が原因であるため、薬物療法においてはACTHとコルチゾールの産生抑制を目的として、主にソマトスタチン受容体SST5に結合するパシレオチドが用いられる。ドパミン作動薬であるカベルゴリンも効果があるがエスケープすることも多い。

一方の副腎性クッシング症候群ではコルチゾールの産生抑制のために、副腎酵素阻害剤であるメチラポン、イスツリサ、トリロスタン、ミトタンを用いて治療を行う。

参照文献
難病情報センターHP
ACTH分泌過剰症(クッシング病)間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(令和4年度改訂)
Cushing症候群・副腎性subclinical Cushing症候群の診断と治療, 大月 道夫, 日内会誌 107:674~680,2018

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