2022年10月14日掲載
医師・歯科医師限定

【第119回日本内科学会レポート】COVID-19による心臓・肺血管の後遺症「CV Long COVID」――心筋炎や肺塞栓症患者の特徴は(2000字)

2022年10月14日掲載
医師・歯科医師限定

日本大学医学部内科学系循環器内科学分野 助教

村田 伸弘先生

COVID-19の後遺症に悩まされる患者は多い。COVID-19後遺症の中でも、呼吸困難や胸痛などの心臓血管特異性の高い症状を呈するものは「CV Long COVID」と呼ばれているが、その根本にあると思われる真の心血管障害のデータは十分でなかった。

村田 伸弘氏(日本大学医学部内科学系循環器内科学分野 助教)は、第119回日本内科学会総会・講演会(2022年4月15日〜17日)にて「日本のCOVID-19後遺症患者における心臓・肺血管障害に関する研究」と題し、CV Long COVIDに関する自験例を用いて解説した。

「Long COVID」と「CV Long COVID」――その定義と症状

SARS-Cov-2ウイルスに感染後、4週間を超えて症状が持続するものは「Long COVID」と定義されている。Long COVIDは、複数の臓器にまたがって多様な症状や兆候を引き起こすことを特徴とし、心臓や肺血管に関しては胸痛、動悸、息切れ、倦怠感などの症状を伴う。

特に呼吸困難、胸痛、動悸などの心臓血管特異性の高い症状を呈するものは「CV Long COVID」と呼ばれ、先行研究などでは「CV PASC(Post acute sequelae of COVID-19)」とされることもある。

Nalbandian A,et al.Nat Med. 2021 Apr;27(4):601-615.より引用

CV Long COVID――心血管障害に関する自験例

CV Long COVIDの原因は、何らかの永続的な心血管障害である可能性が示唆されているが、そのデータは十分でない。そこで我々は、CV Long COVID患者における真の心血管障害をマルチモダリティイメージングによって明らかにするため、解析を行った。

本研究では、2020年1月〜2021年9月までの期間において日本大学医学部附属板橋病院に入院したCOVID-19患者584人からエンロールしている。院内死亡や持続する肺炎患者は除外し、動悸、胸痛、呼吸苦などの心血管症状を呈する52人のCV Long COVID患者に対し、同院の循環器外来にて評価を行った。

心電図、X線撮影、超音波検査、各種バイオマーカーによってスクリーニングと評価をしたところ、8人に心筋炎、4人に肺塞栓症、2人に心筋炎と肺塞栓症を認めた。冠動脈疾患の患者はいなかった。

心筋炎や肺塞栓症を呈した14人の患者の特徴としては、やや高齢でBMIが高く、心房細動の既往が多い傾向にあった。入院中の経過に関しては、重症度や人工呼吸管理の割合が高く、徐脈や失神といった不整脈イベントが多く発生していた。外来受診時の評価としては、胸痛や動悸の症状がやや多く、症状の持続期間も長い傾向にあった。

またCV Long COVIDの症状について、心筋炎と肺塞栓症に分けて考察した結果、肺塞栓症患者は胸痛の症状が有意に多く、症状の持続期間も心筋炎患者と比べて長かった。ロジスティック回帰分析の結果、心筋炎患者においては重症度や酸素投与などのオッズ比が高い傾向にあり、肺塞栓症患者においては胸痛などのCV Long COVIDの症状や、その持続期間の長さが寄与因子であることが分かった。

代表的症例――心筋炎・肺塞栓症

CV Long COVID(心筋炎および肺塞栓症)の代表的な症例を紹介する。

心筋炎

患者は60歳代女性。入院中は気管挿管を行うほど状態が非常に悪く、退院後に呼吸苦と動悸を訴えて循環器内科外来を受診した。心電図変化がみられたため、心筋炎を含めた評価のために遅延造影(LGE)MRIを行った。下側壁にかけて心外膜付近にLGEを認め、これをもって心筋炎と診断した。

肺塞栓症

患者は60歳代女性で入院中は軽症で経過した。退院後に長期に持続する呼吸苦と胸痛のため当院循環器内科外来を受診。Dダイマー軽度陽性を認めたため肺血流シンチグラフィーを行ったところ、右下葉を中心とした欠損を認め、末梢の肺塞栓症の診断に至った。

*本講演の内容はFront Cardiovasc Med. 2022 Sep 23;9:968584. doi: 10.3389/fcvm.2022.968584. eCollection 2022.に掲載されています

講演のまとめ

  • CV Long COVID症状で循環器内科外来を受診した患者はCOVID-19入院患者の9%だった
  • CV Long COVID患者の27%が何らかの心血管障害を有していた
  • CV Long COVIDにおける心筋炎患者は、急性期の重症度が高く、入院中の心血管イベント(徐脈や失神など)との関連を認めた
  • CV Long COVIDにおける肺塞栓症患者は胸痛を訴えることが多く、症状の持続期間が長い傾向にあった

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