2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

【インタビュー】社会的問題の「不育症」、抗リン脂質抗体症候群が原因なら治療可能――概念浸透がまず課題(800字)

2022年02月09日掲載
医師・歯科医師限定

北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授

渥美 達也先生

血栓止血領域のトピックスとしては、抗リン脂質抗体症候群を取り上げる。血栓症と不育症を特徴とし、少子化、出生率の著しい低下のなかで大変重要な社会問題になっている。流産の原因の中では、唯一治療が可能な疾患であり、治療の社会的意味は大きい。治療はヘパリン使用が一般的だが、ヘパリン抵抗性の患者でも治療が受けられるよう選択肢が広がりつつある。

抗リン脂質抗体症候群の中でも不育症に注目が集まっている状況で、名古屋市立大学の杉浦真弓氏による不育症研究センターなど、専門外来を始める病院もある。不育症に関しては産科が妊娠管理など治療の主体になり、膠原病内科は抗リン脂質抗体症候群の診断の補佐をする。また、抗リン脂質抗体症候群患者の約半数は全身性エリテマトーデス(SLE)でもあるので、その管理も担う。さらに2か月健診が終わると産科の手を離れるので、その後の治療も膠原病内科が引き継ぐことになる。

抗リン脂質抗体症候群はほかの膠原病と同様、いくつかの遺伝的要因と環境因子が組み合わさって発症する多因子疾患である。関節痛や自己抗体による症状など、SLEに類似する点が多いことも特徴といえるだろう。

昨年には抗リン脂質抗体パネルという検査が保険適用となり、血栓のリスクがある程度判定できるようになった。抗リン脂質抗体症候群の原因となる自己抗体にはさまざまな種類があるが、それらの特性と血栓リスクの関係性は徐々に判明しつつある。一方で不育症の領域に関しては研究が進んでおらず、リスクの判定方法や治療の選択方法が確立されていない。

そもそも不妊症に比べて不育症は言葉自体が浸透しておらず、反復流産や習慣的流産の原因が抗リン脂質抗体症候群であるにもかかわらず、診断に至らないと治療に移ることができなくなってしまう。まずは不育症という概念を浸透させ、積極的な検査と診断を行っていくことが課題だろう。

会員登録をすると、
記事全文が読めるページに遷移できます。

会員登録して全文を読む

医師について

新着記事